√3*2
「ハァ……」
あの日から、一週間ちょっと。
より詳しくいえば、11日間。
「………」
…俺は、なっちゃんと顔を合わせていない。
だからといって、避けているわけではない。生徒会の仕事が忙しいから社会科準備室に行く暇もなければ、授業に出る余裕もないからだ。
そう。決して故意に避けていたわけではないのだ。
「まあ、気まずいのは確かだけどな」
なっちゃんに頭を撫でて貰うのは好きだ。甘やかされるのも、恥かしいという気持ちが強いけれど、嫌いではない。
……もしかして。
なっちゃんは俺を子供扱いしているから、あんな事をしたのだろうか。
*****
先程職員室に恐る恐る行った時には、なっちゃんの姿はなかった。あの時は、居ない事に内心ホッとしたのだが、今となっては職員室に居てくれた方が良かった。
…他の人が居た方が、用件だけ話して、すぐに別れる事が出来るからな。
「………」
だけど今更こんな事くらいで、ずっとウジウジしているのも性に合わない。
…あ、あれは、教師と生徒のただのコミュニケーションだ。特に深い理由はないはずだ。そうに決まっている。だいたい!ストイックな、なっちゃんが、男でしかも、可愛くない性格をした生徒の俺に下心を持つわけがない。俺が深く考え過ぎなだけだ。自惚れ過ぎだ、俺。
よっし。
腹を括れ、俺。
「…失礼、しまーす」
社会化準備室の扉を三回ノックした後に、中に入る。
「………、愛咲…?」
そうすれば。
銜えていた煙草を落とす勢いで、驚いた表情をしていたなっちゃんが居た。
「(つーか、この部屋…煙たい……っ)」
チラリと机の上に置いてある灰皿に目をやれば、物凄い数の吸殻が視界に入る。
「…………」
「……っ…悪い」
「あー……いや、すぐに、出て行くから、お構いなくー…」
灰皿の空いたスペースに、煙草を押し付けて火を消すと、なっちゃんは窓を開けて換気をし始めた。
「………」
いくらなっちゃん以外の教員が入って来ないといっても、校内でこんな堂々と煙草を吸っていいのか?つーか、前はこんなに吸ってなかったよな?むしろ吸っている姿を見られれば、レアだったくらいだ。
「えーっと、その、コレ」
今は機嫌が悪いと察し取った俺は、用件だけを済ませて生徒会室に戻ろうと考えた。
会長から預かっていた小冊子を、なっちゃんに手渡す。
「かいちょーから、渡しておけって…」
「………、」
「えっと、うん…。それだけ、かな?」
「…愛咲」
「っ、じゃあ、俺は戻るね」
ウジウジしているのは性に合わないとは言ったものの、これはめちゃくちゃ気まずい。
顔を見れば、その声を聞けば、あの日の事を思い出してしまう。何故俺にあんな事をしたのか非常に気になるけれど、……今となってはその理由は知らない方がいいのかもしれない。
そう考えた俺は、すぐさま部屋から出ようとした。
「……、!?」
…のだが。
「………、待ってくれ」
それよりも先に、なっちゃんに腕を掴まれて阻止をされてしまった。
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