√2*9
「………うわー…」
え?じゃあ、俺はあの日から(会長の頭の中では)付き合っていたのか?恋人同士だったのか?だからたまに気持ち悪いくらい俺に構ってきた日もあったのか…。
「(なんというか、アレ、だよな)」
報復されそうなので、絶対に口には出さないけれど。
「(…会長って、大概痛いヤツだな)」
一途というよりも、もっと重たい“何か”だよな、コレって。
会長は自分の気持ちを上手く伝えれずに、いつか好きな子をストーカーとか監禁とかして、警察に捕まりそうだ。
「(ん?いや、今の状況からすると、それは…俺か?)」
そ、それだけは、勘弁して貰いたい…っ。
これは何とかして穏便に事を終わらせるように、話をはぐらかさければッ。
「で、でもぉー」
「……?」
「俺は、かいちょーから、気持ちを伝えて貰ってないよ?それなのに、付き合っているっていうのはさ、おかしくなーい?」
小首を傾げて、そう訊ねてみれば。会長は、まるで火を噴いたように顔を真っ赤に染めて、一歩だけ後ろに下がった。
「…っ、お前は俺に『愛咲の作った味噌汁を毎日飲みたい』とでも言わせる気かよ!?」
「へっ?…え、いや、そこまでは求めてないけど」
というかそれは告白というよりも、プロポーズじゃねえか。
…本当にコイツの思考回路はどうなってやがるんだ…?
「かいちょーってさ。俺と同等なくらいに『プレイボーイだー』なんて言われてたけどさ。…もしかして、それってデマ?セフレの存在すらもなかったの?」
「ッ、煩えな!」
「あ、否定はしないんだ」
そうか。会長は口や態度は悪くても、根は真面目なヤツなんだよな。
「と、とにかくだな!お前は一生俺の傍に居る事が決まってんだよ!」
「……え?そうなの?」
「当たり前だろ。此処を卒業しても離してやらねえぞ。一緒の大学に行って、同じ講義を受けて、卒業して、…行く行くは、会長である俺の秘書をして貰うからな!勿論、帰る家は一緒だ。後々入るであろう墓も一緒だ」
…何それ。四六時中一緒って事か。
「というか、俺は大学行く気ないよ?」
「専業主夫になるのか!?…チッ、それも悪くねえな……」
「いや、ならないけどね」
そして会長はそのまま、俺を大学に行かせてずっと一緒に居るべきなのか、それとも専業主夫をしてもらって家庭を守って貰うべきなのかを、一人で悩んでいた。
俺はそんな会長の姿を見て。
「ふはっ…!」
思わず吹き出してしまった。
「な、何だよ?」
「……いやー?別に?」
何だよ、コイツ。
喋ってみると、意外と面白いヤツじゃん。
可愛いヤツじゃん。
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