√2*4
「俺に出来る分の仕事はしといたからさ。もう少し寝ててもいいよー」
とは言っても、俺に出来る事は高が知れていたけれど。流石に会長の全部の仕事まで、俺には理解が出来ていない。というよりも、会長が自分の仕事を他の人にさせるのを嫌がる為、仕事内容すらもあまり見たことがないのだ。
「……チッ、もう寝ねぇよ」
「そう?まあ、いいけどさー」
「それより……。おら、こっちに来い」
「なぁに?」
自分の席に座って書類の作成をしていた時だった。
今度は会長から呼び出された。いつもならば、「用があるなら、会長が来ればいいじゃーん」と、からかっていたのだが。今日はもう無駄口を叩くのは止めておこうと思った優しい俺は、呼ばれるまま素直に会長の席に近付いた。
「何の用?書類確認?」
「違う」
そして会長は席から立ち上がり、俺にその席に座るようにと命令してきた。
………意味が分からん。
「……なんで?やだよ」
「いいから座れ」
「やだってば」
何故わざわざ俺に座らせるのかが分からない。もしかしたら椅子に変な仕掛けでもしてあるのか?俺が座った瞬間、椅子が壊れるとか?
「この俺様がお前の肩を揉んでやると言ってるんだ」
…なるほど。
自分だけ一方的にされた事が嫌だったのか。
「だったら余計にいやだ」
「…っ、てめぇ……!」
「俺はいいよ。かいちょー程疲れてないし」
「……、いいから、座りやがれ…!」
「…う、わっ!?」
グイッと強い力で体を引っ張られ、そのままの勢いで椅子に座らされた。
急いで立ち上がろうとしたのだが、それよりも先に会長が俺の肩を押さえてきたため、立つ事が出来なくなってしまった。
「お、俺には、そんな事しなくていいって…!」
「煩ぇ、バーカ」
こんな事、有り難迷惑でしかない。…いや、そんな事を言うと俺の行動に対して、会長もそう思ったかもしれないけれど。でも、だけど。俺は絶対に揉まれたくない……!
「…っ、わ、ッ、ふは、ちょっ…!」
「………お前…?」
「ば、か!ッ、ふ、ふふ、くすぐったい…ッ」
その理由はというと。
…もうお察しの通り、俺は肩を揉まれると、めちゃくちゃくすぐったいのだ。
つーか。俺に気安く触るな。
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