√2*2
「…お前が?……俺に?」
何という不審そうな目…。
そんな目で見られて訊ねられたら、流石の俺でもショックを受けるぞ。だが俺の日頃の行いが悪い所為でもあるので、何とも言えない。
だが、たかが肩叩きくらいで、その他のどんな嫌がらせ何が出来るというのだ。それにここまで弱りきった人を前にそんなことをするわけないだろうが。
いくら何でも俺への扱いが酷過ぎると思うので、やはり俺の善意を疑った会長が全部悪いということにしておこう。
「……嫌なら、別にいいもん…」
プイッと視線を逸らす。
あー、やめたやめた。心配なんて柄でもない事するからこんな風になってしまうんだ。
ふんっ。そんなに倒れたいのならば、無理を重ねる前に早めに倒れてしまえ。だが、その時は俺は看病なんてしてやらないんだからな。どうぞ勝手に可愛いチワワ達にでも優しく看病して貰えばいい。
眠気覚ましのコーヒーも絶対に淹れてやるものか。
「………おい、」
「………」
「おい、…愛咲、」
「……なに?うるさいんだけど?」
会長に視線も合わせず、だが、ほんのり語尾を伸ばすということを忘れずに冷たく言い放てば、会長の方からはチッと舌打ちが聞こえてきた。
そんなことをされても怖くも痒くもねぇからな。
「…仕方ねぇな」
「………」
「お前がどうしてもって言うなら…、」
「…………」
「愛咲なら、…特別に揉ませてやるよ」
「興味ない」
「……な、っ?!」
今度は語尾を伸ばさずにピシャッと言い切る。照れているのか、何なのか知らないけれども、会長がモジモジと言葉を詰まらせている様は、ハッキリ言って気色悪い。そんな需要一切ねぇから。
すると、ガタッと激しい音を立てて会長が席から立ち上がった。
「てめぇ!ふざけんな!」
「……ふざけてないしー」
「この俺様の肩を揉めるんだぞ。喜んで飛び付けよ」
「じいしきかじょー」
「………っ、」
やり場のない怒りに会長は拳を握っていた。
……少しからかい過ぎただろうか。このまま怒りと疲れで倒れられても敵わない。仕方ないから、ここは俺が折れてやるか…。
「冗談だってー」
「…………」
「俺が会長を癒してあげるよ」
ほら、座って。と促せば、案外すんなりと言う事を聞いてくれた会長は、ドスンと勢い良く座った。どうやら会長もこれ以上言い争いするのは不毛だと思ったのだろう。確かに休む暇は作っても、喧嘩をしている暇はないからな。
「では、ちょっくら失礼しまーす」
そんなことを考えながら、会長の肩に手を置いた。
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