√1*6
「ほ、ほら。俺がその汚ねぇ物を処理してやるから自分で取り出せよ」
こういったものは事務的にちゃちゃっと済ませればいいだけの話だ。
変に恥かしがったり、戸惑ったりしてはいけない。そんな事をしても自分の徳には一切ならない上に、犬塚を喜ばせるだけだからな。
犬塚から視線を逸らしながら、下腹部を指差す。
しかしそうすれば案の定といったところだろうか。犬塚から不満の声が上がってきた。
何が、「愛咲がしてくれ」だ。…ふ、ふざけんなっ。何で俺がそんな事から面倒見なくちゃいけないんだ。絶対するものか。
「煩い。早くしねぇなら、俺は帰るだけだ」
「………」
「5、4、3…、」
「…チッ、分かった」
俺の意思が固い事に気が付いたのか、犬塚は渋々と自分でベルトと、ズボンのホックを外し、チャックを下ろす。俺はその様子を横目で見ながら、気付かれないように軽く深呼吸を繰り返す。
…しかし。
下着の中から取り出された、犬塚の勃起したそれを見て、俺は愕然とした。
「つーか、…デカッ」
「…そうか?」
他人と比べた事がないから分からない。と、いけしゃあしゃあと言い放つ犬塚に、俺は軽く殺意が芽生えた。…どう考えても、高校生のサイズではないだろう。成人男性すらも裸足で逃げ出すレベルだ。
しかも俺のよりも色素が濃くて、…なんていうか、見るからに凶悪的。
「…う゛ー」
何で俺はこんな物を処理するなんて言い出したのだろうか。
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
もう約束してしまった以上、取り消せない。
きっと今から撤回しても、犬塚は納得してくれないだろう。
…それに、もし撤回して逆上されても困るからな。下手したら、手で処理する以上の事を無理矢理されるかもしれない。情けないが、力では全く適わないからな。
ここはやはり速やかに終わらせよう。
「…っ、なるべく、早く射精しろよな」
この俺が直々にしてやるんだから、有り難く思いやがれ。
そして俺は、見るからに自分の物よりも遥かにサイズの大きいそれに、手を伸ばす。
恥かしがらず、戸惑わず。そう決めていた俺は、視線も合わさないまま、竿を扱く。
「(…こうか?)」
しかし、自分のと同じ機能を備え持った物なのに、何故か勝手が分からず、ただ我武者羅に上下に擦るだけになってしまった。今まで何十回、何百回とオナニーはしてきたはずなのに何でだ…。
表面上はポーカーフェイスを気取っているが、実際は頭の中はパニックになっていて、力の加減すらも分かっちゃいない。
「愛咲…、」
「な、何だよ?」
「…少し、痛いのだが」
「え、?あ、っ…、ご、ごめん」
すると流石にそんな雑な仕方では気持ち良くさせるどころか、むしろ痛みを与えてしまっていたようだ。こんな事をさせられて、謝る必要なんて俺にはないはずなのに、同じ男として、思わず素直に謝ってしまった。
「犬塚…、無理だよ。やっぱり俺、出来ない」
「唾液」
「…え?」
「唾、垂らして」
「な、何が?…へっ?何処に?」
「ここに」
“ここ”、そう言って指が指された場所に、俺はとうとう戸惑いを隠せなくなった。
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