チャラ男会計の受難 | ナノ


√1*4



「…離せ」

しかし犬塚は、そんな日野のラブラブアタックを華麗にスルーするどころか、恋のつぼみすらもバッキボキに圧し折るかの如く、乱暴に腕を振り払った。
だけどそんな冷たくて乱暴な態度を取り続ける犬塚に、日野は持ち前のポジティブさを持って「いいじゃん!俺達の仲だろ!」と更に擦り寄っていた。

「(…それは一体、どんな仲なんですかねぇ?)」

何だこれ、何だこれ、何だこれ!
訳が分からない事に、すっげぇ、腹立つんだけど!ムカつき過ぎて吐きそうだ。口の中が胃液の味がする。
犬塚にも日野にも重たい一発をお見舞いしてやりたい気分だ。

「…ふんっ」

知らん。あとは勝手にバカップル従兄弟で好きにすればいい。俺はさっさと用事を済ませて、生徒会室に戻ろう。あの会長だって一人で頑張っているというのに、こんな所で時間を潰している時間は俺にはないのだから。
…それに正直、これ以上二人の顔を見ている余裕がない。

「愛咲」

しかし俺が一人で移動する事に目敏く気付いた犬塚は、日野を置いて俺に着いて来ようとしている。…馬鹿犬め。そんな事をしたら余計に日野が反応するだろうが。怒りの矛先が俺に来るだろうが。

「充!俺の駿を独り占めするなよ!」

…ほらな。
つーか、“俺の駿”って。もうその好意を隠す事すらしないんだな。それとも日野にも余裕がなくなったというべきだろうが。


だがな。

「ふざけんな。犬塚はすでに俺の物なんだよ」

…そんな台詞聞かされたら、俺だって猫被り続けられねぇから。
いつもみたいにどんな事を言われてもヘラヘラ笑って許す余裕すらねぇから。

「クソ餓鬼、目ん玉かっぽじってよく見てな」

俺より背の高い犬塚の腕を引っ張り、有無を言わさず無理矢理屈ませる。俺も少しだけ背伸びをして、同じ男として羨ましい程太くて逞しいその首に噛み付いてやった。
すると珍しく動揺したのか、犬塚は少しだけビクッと身体を震わして身じろいだ。そんな犬塚の様子に、先程までの苛々が嘘のように回復していく。
可愛いワンコには褒美をやらなくてはいけないな。
俺はそのまま噛んだ箇所を労わるかのように、ベロリと舌を這わせて、最後に吸い付いた。…綺麗に付いた赤い印を見て、俺はにんまりと笑う。

「…分かったら、二度と俺達の邪魔するなよ」

その笑みを浮かべたまま日野にとどめの一言を放って、俺は犬塚を引っ張ってそこを後にした。

…背中には突き刺さる程の鋭い視線を浴びながら。



ふは。ふははははは。
すっげぇ、気分が良い。チャラ男として生活するのも楽で楽しかったが、言いたい事をハッキリと言えるのは何と気持ちがいい事だろうか。
そんな事を思いながら、人目も気にせず悪役のように笑って目的地の職員室を目指していたのだが。

「……っわ、?!」

例の如く、犬塚に引っ張られて違う部屋へと入る事になってしまった。

「痛ぇな、何するんだよ」

「………勃った」

「…、はぁ?」

「責任を取れ」

まさに絶句。




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