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チャラ男会計総受け状態。
あんな事があった次の日になっちゃんに会うのは気まずくて。俺は然程生徒会の仕事が忙しくないにも拘らず、教室には顔も出さなかった。だってどんな顔して会えばいいんだよ。いままで通りの反応をして普通に接する自信は俺にはない。
なので俺はとりあえず、昨日謎のまま答えが知れなかった事を今二人に訊ねようと思っている。
「ねぇ、ちょっと二人に訊いていーい?」
「…あ?」
俺の声に会長は書類から目を離し顔を上げた。犬塚も同様にパソコン画面に近付けていた顔を離し、視線を俺に向けてきた。俺の言葉を促したりはして来なかったが、どうやらその反応から察するに俺の話を聞いてくれるらしい。
「えーっとね」
単刀直入に「お前達も生徒会の仕事サボっていたよな」と訊ければどれだけ楽だろうか。だがそんな事を言ったが最後、また二人も俺の元から離れていくかもしれない。もっとオブラートに包んで発言しないと駄目だよな。
「…副会長達の事どう思う?」
これは的を得た質問だろう。我ながらいい質問だと思う。なっちゃんが言った事が事実で、きちんと仕事をしていたならば、俺と同じように副会長達に相当な嫌悪を抱いているはずだ。逆に俺が思っていた通り仕事をしていなければ、副会長達の事を責めないだろう。いや、責められないと言った方がしっくりくるな。
さあ、どっちだ?
「は?あいつらか?」
するとすぐに反応を返してくれたのは会長だ。俺の質問にあからさまに嫌な顔をして、眉間に皺を寄せながら荒々しくこう言い放った。
「自分の仕事一つ出来ねぇ、責任感の無い屑野郎だろ」
「……ほんと?」
「本当も何もそれが事実じゃねぇか」
「犬塚も…?」
「ああ」
これは俺からしてみれば喜ばしい反応だと思っていいのだろうか。会長と犬塚はなっちゃんが言っていた通りずっと仕事してきたのなら、一体何処でしてた?此処には来なかったじゃないか。何でこんなにも食い違っているんだ?これはもう遠回しに聞かずに、きちんと訳を聞かないと気が済まない。それに仕事をきちんとしていたのに、俺に誤解されたままで居るのも会長と犬塚も嫌だろう。俺だって逆の立場だったらそんなの絶対に嫌だから。
「愛咲てめぇは何とも思わないのか?」
「…ううん。そりゃ腹は立ってるよ。代表で選ばれたのに仕事を放棄して皆に迷惑を掛けてるんだから」
その言葉に続いて、…でも、と続ける俺に会長と犬塚は黙って俺の話の続きを聞いてくれた。
「会長と犬塚は…?ちゃんと仕事してた?」
「どういう意味だ?」
「副会長達と同じように仕事してない時があったよね?」
「…あ゛?ふざけんな。してたっつーの」
「本当に?」
「当たり前だ。会長の俺様が仕事しなくてどうするんだよ」
どんどん荒くなっていく会長の口調と態度。どうやら相当苛立っているようだ。しかしその反応から察するに、会長の言っていることは嘘ではないという事が分かる。
「犬塚も?」
「部屋で仕事してた」
「…え?部屋で?」
「ああ」
何で部屋なんだ?一体何の為に?
「もしかしてかいちょーも?」
「違ぇ。忘れたのか。俺は親父の仕事の関係で暫く実家に戻ってただろうが」
いやいやいや。忘れてたとかそういう問題ではなく。俺はその事実すらも知らなかったのだが。今初めて聞いたぞ。
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