チャラ男会計の受難 | ナノ


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チャラ男会計総受け状態。担任×会計


一般的の常識は此処では通じない。「夜の誘い=食事」なんて方程式はこの学園には存在しないと思っていいくらいだ。それほど此処は色々な意味で無法地帯だと俺は認識している。そんなのなっちゃんだって分かりきっているだろう。

だからこそ。

「何であんなに言い渋っていたの?」

何とも分り難い食事の誘いをしてきたなっちゃんが不思議で仕方がない。

「ねぇ?何で?」

首を傾げて訊ねれば、なっちゃんはあからさまに嫌そうな表情を浮かべて舌打ちを漏らした。え?何その反応?

「お前な…、そういうのは聞かねぇのが礼儀ってもんだろうが」

「え?そうなの?ごめんねぇ、俺礼儀がなってないみたい」

わざと苛立たせるように返せば(おまけに満面の笑みを浮かべてみた)、なっちゃんは更に眉間の皺を増やした。
さっき俺の事を阿呆と言ったり、からかった仕返しだ。ばーか。ざまあみろ。
やはりと言うべきか。今更と言うべきか。俺は人の嫌がる顔を見るのが好きなようだ。
というより人より優位に立つことが好きなのかもしれない。だからよく会長をからかっているのだと思う。うん。改めて認識した。
いや別に、俺はサドとかじゃないけれど。

「…断られるのは嫌だろ」

「……?、俺は、断らないよ?」

「断らないのか?」

「何で?どういう意味?」

「あー…、いや、生徒会の仕事とか忙しいだろ?」

「…んー?」

というか、何だこの互いの疑問返し大会は?

「確かに忙しいけど、ご飯を抜くほど忙しくないよー」

「そうか」

本当に忙しい時は睡眠時間や飯の時間すらも取れない程忙しいけれど。
一人で生徒会の仕事をこなしていたあの時と比べるとこの程度何て事はない。
それに今は会長も犬塚も居るしな。とんでもない変態共だが、あいつらの仕事の捌きは最高だ。犬塚は機械に強くなれば更に戦力になるだろう。
まぁ、だけど俺には負けるけどな。と内心、鼻を高くしていると、急に髪の毛をグシャグシャと掻き混ぜられた。

「わ、っ、な、何?」

「あんまり頑張り過ぎるなよ」

「う、うん…?」

なっちゃんは生徒の頭を撫でるのが癖なのだろうか。こりゃ、可愛い男子共に人気が出るはずだ。教師で唯一親衛隊がある程だからな(非公認)。流石だ。大人だからこそスマートに出来るコミュニケーションなのだろう。
意地悪な人だけど、なっちゃんは彼女が出来たら、絶対ドロドロに甘やかすタイプと見た。そして時には飴と鞭を器用に使い分けて彼女はより一層なっちゃんにメロメロになるのだ。
あーあ。やだやだ。これだからモテる男は。

「愛咲?」

「…んー?なぁに?」

「七時に此処に迎えに行く」

「おーけー」

お願いしまぁす、と最後に一言付け加えれば、なっちゃんは頷いた。
どうやらなっちゃんはこれで用が済んだ様子。

「授業にも出ろよ」

「それはお仕事次第かなぁ」

「…お前な」

そういえば今日はなっちゃんが担当の社会科の授業があったような…。

「じゃぁ、なっちゃんの授業だけ顔見せに行くね」

「ったく、仕方ねぇな」

「居眠りしちゃっても見逃してね」

「それは無理な相談だ」

「ちぇっ」

俺のその拗ねた反応に気を良くしたのか、なっちゃんは最後にまた一度だけ俺の頭をクシャっと撫でると、そのまま生徒会室から出て行った。

さて。俺もそろそろ仕事に取り掛かるか。




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