チャラ男会計の受難 | ナノ


28

チャラ男会計総受け状態。担任×会計


「えっと、何か他にご用事?」

首を傾げて訊ねれば、なっちゃんは眉間に皺を寄せて「…あー」とだけ声を発した。
何だ何だ?そんなに言い難い事なのか?そんな反応されたら気になって仕方がない。

「なっちゃん?」

「…お前、今日の夜暇か?」

「へ…?」

やっと重たい口を開いたかと思えば。なっちゃんが発したのはお誘いの言葉だった。

「えっと、」

言うのを渋ってたくらいだからこの学園の機密事項が関わっているのかと思っていた。それなのに何故なっちゃんは、俺を誘うくらいであんなにも言い難そうな表情をしたのだろうか。

って。
あ、…あれ?

「よ、夜のお誘い?」

「ああ」

そ、それは所謂あれか?あれだよな?
…セックスのお誘いというやつか?
小さくて女の子のような奴からなら何度も誘われた事はあるけれども、自分より体格の良い奴からこんなにもストレートに誘われたことは一度も無い。こういう場合はどうやって断ればいいんだ?チャラ男らしく軽ーく断れば大丈夫なのか?
というか。なっちゃんってこんな奴だったのかよ。そりゃ確かに男の俺から見ても格好良いけれど、節操無しに生徒を食べるような奴とは思っていなかった。今までそういう噂も一度も聞いたことないし。

「あ、いや…その」

「…嫌か?」

「えっ、嫌というか…何というか、」

少し残念そうに眉を下げられると上手く断れなくなる。
これが会長や犬塚相手なら躊躇無くバシッと断れるというのに、あからさまに自分より格上のなっちゃん相手だと上手いあしらい方が思い付かない。

「その、流石に…教師と生徒でそういう如何わしい関係になるのはどうかなぁって…」

この断り方ではチャラ男らしくなかっただろうか。慌てて付け足すように、えへへと軽く笑えば、なっちゃんの眉間にはこれでもかというくらいに皺が寄った。

「…なっちゃん?」

「阿呆」

「い、痛…っ、え、な、何?」

そして今度は溜息を吐かれたと思えば、仕舞いには頭を叩かれた。しかも今度は薄っぺらい紙の束ではなく平手打ち。地味に痛い。

「俺はそういうつもりで誘ったわけじゃない」

「…へ?」

「昨日言っただろうが。一緒に飯食いに行くか、と」

「あ…」

その言葉を聞いた瞬間、“等価交換、だろ?”とニヤリと笑ったなっちゃんの姿を思い出した。

「そういえば、そうだったね」

「ったく、ませガキめ」

「ち、違うよぉ」

「どうだか」

「なっ、…元々言えばなっちゃんが悪いんだからねッ」

「ふーん。俺の所為にする気か?」

俺をからかうなっちゃんのその顔は、教師にはあるまじき表情だろう。
そんなに俺を苛めるのは楽しいのかよ、おい。

「言い難そうに夜のお誘いを受けたら誰でもそう思うってば」

それに普通に食事の誘いならば言い難そうにする必要がないだろう。サラリと用件だけ言えば済むはずだ。それなのに何故あんなにも言い渋っていたんだろうか。





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