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チャラ男会計総受け状態。担任×会計
翌日の午前六時十分。
眠たい目を擦り、欠伸を噛み締めながら、俺は生徒会室の扉の前に立っていたりする。
会長と犬塚から一週間のサボりの件について怒られなかったものの。このまま叱られもせず、罰を受けるわけでもなく、不問にされるのは嫌だ。(かと言って、別に怒られたいわけでも、罰せられたいわけではないけれども)
なので、この一週間俺の分まで仕事をしてくれた二人の負担を少しでも取り除くために、早朝から生徒会の仕事をしようと思っている。
まぁ。要するに罪滅ぼしだ。
百八十センチメートル越えの身長が目標の俺にとって、育ち盛りの今こそ就寝時間は大切だが…。止むを得ない。自分で蒔いた種だ。きっちりと刈り取らなければ。
…いや別に、俺の身長は低くないけどな。周りの人間が大き過ぎる所為で低く見られがちだが、四捨五入すれば百八十センチあるし。というか実は百八十センチ以上あるし。
そんな事を一人で脳内口論しながら、扉を開けようと鍵穴に鍵を差し込めば。
「ん?」
既に鍵が開いている事に気が付いた。
…一体誰だ?
一般生徒は入る事はないだろうし、もしかしたら会長か犬塚か?
来るのが遅かったのかと、眉を顰めながら扉を開けば、そこには意外な人物が居た。
「…愛咲?」
「なっちゃん…?」
そう。先生が居たのだ。
どうやらなっちゃんも俺のいきなりの登場に少し驚いている様子。
「えっと、なっちゃん…おはよー?」
「敬称を付けろ、敬称を」
「あれぇ?久しぶりの注意だね。てっきりもう公認かと思ってたぁ……、あいたっ」
持っていた書類を丸めた物で頭をペシッと叩かれてしまった。だが、いくら書類の束を丸めた物で叩かれたといっても、所詮薄っぺらい紙。全然痛くない。
「えへへ」とだらしない笑みを浮かべれば、なっちゃんはハァと呆れたように溜息を吐いた後、おはようと挨拶を返してくれた。意外と律儀だな。
「ところで、なっちゃんせんせー?」
「…あ?」
“なっちゃん”か“先生”かどちらかにしろよという視線を華麗に無視しながら、俺は話を進める。
「何で此処に居るの?」
「馬鹿か。俺は生徒会顧問だ」
「そうだけどぉ…、此処に居る所初めて見たしー」
チャラ男らしく語尾を伸ばしながら喋る姿は何処からどう見ても様になっているだろう。俺の本当の姿を知る人間ですら見間違えてしまうくらいに。
たまに俺でさえ本来の性格を忘れてしまいそうだからな。
「出来る生徒が居るお陰で、放任出来ていたからな」
「えー?褒めても何にも出ないんだからねっ」
「…でも今はそうはいかねぇけど」
「うっ」
「昨日までは誰かさんもサボってたようだし」
「うぐ…っ」
副会長と双子の事と。
そして誰かさんとは紛れも無く俺の事だろう。
「い、痛い所突かれた…」
どれもこれも事実なだけ、余計に痛い。
左胸を押さえながら唸れば、何故か頭を撫でられた。
「…なっちゃん?」
「その調子だと仲直り出来たようだな」
「べ、別に、喧嘩してたわけじゃないから」
「良かったな」
「……うん」
整えた髪の毛をクシャクシャと掻き混ぜられたものの。何故かあまり嫌な気はしなかった。でもやはりこの年齢にもなって頭を撫でられるのは少し恥かしいものがある。
「あ、…えっと、俺、仕事あるから」
悪気無く善意で撫でてくれているのであろうその手を、乱暴に振り払うのは流石に良心が痛んだので、俺は仕事を口実になっちゃんとの距離をさり気なく開けた。
そうすればなっちゃんは「そうか」とすんなりと頷く。
なっちゃんの様子から察するに生徒会室での用は済んだように見える。
「なっちゃんは、もう行くんでしょ?」
「ああ」
「うん。じゃぁ、また後でね?」
「………」
「…せんせ?」
しかしなっちゃんは一向にその場を立ち去ろうとはしなかった。
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