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チャラ男会計総受け状態。書記×会計
生徒会室から少し離れていて、その上一般生徒が安易に近寄れない所がいい。
それはこの場から何処が一番適した場所だろうか。犬塚の手を取って勢いで飛び出してきたものの、いい場所が浮かばない。
どうしたものかと速めていた歩を少しだけ緩めれば。
「っ、?!」
掴んでいた犬塚の腕から逆に手を取られてしまい、目の前の教室に無理やり押し込まれてしまった。
そこは。
偶然にも生徒会役員しか使わない印刷室。
いい場所を選んでくれたじゃないか犬塚君。此処なら一般生徒は疎か、なっちゃん以外の教師や風紀委員すら入らない。
だが他の言い方をすれば、近況から考察するに会長くらいしか入っては来ないということだ。
つまり。何か予期せぬ事態が起きても誰も助けには来ないという事にもなる。
だけど俺をこの場に押し込んだのは紛れもなく犬塚だ。不良でもなければ、俺に恨みを抱いている人物ではない。
…いや。
もしかしたらこの一週間で俺に恨みを抱いたかもしれない。
「犬塚」
俺が名前を呼べば、犬塚は掴んだ手をゆっくりと離してくれた。少し痛かったので、簡単に離してくれて正直ホッとした。
だが次の瞬間には壁に押しやられて、まるで逃がさないと言わんばかりに犬塚の左右の腕で囲まれてしまい、再び息を詰める事となった。
「…怒ってる、のか?」
何を当たり前の事を訊いてるんだ俺は。
そんなの訊くまでもなく答えは決まっているじゃないか。
例えどんな聖人君子であろうとも答えは一つだ。
「ああ」
そう、イエスしかない。当たり前だ。
俺が全面的に悪いんだから。
「犬塚、本当にごめん」
「…許さない」
「そうだよな。…本当に悪い。一週間も逃げるような行動を取って…」
「それは別にいい。それより何故会長の名前を呼んだ?」
「……は?」
俺の聞き間違いか?今犬塚は何て言った?
“それは別にいい”?
「お前、何言って…」
「あいつとの間に何があった?」
「と、特にないけど……、というか、え?お前は俺に怒ってるんじゃないのか?」
「…俺が怒ってないように見えるか?」
いや、怒っているように見えるけども。
犬塚の怒りの矛先が訳が分からない。俺が一週間音沙汰も無しに逃げていた事に怒っているんじゃないのか。何でそれよりも俺が会長の名前を呼んだだけの事にこんなにも怒ってるんだよ。
「犬塚は俺が返事もせずに逃げた事で、俺を嫌いになったんじゃないのか…?」
「なってない」
「…で、でも」
「何だ?そんなに嫌いになって欲しかったのか?だが残念だったな。余計にお前の事が恋しくて、愛しくなったくらいだ」
そうやって流暢に話す犬塚の台詞は、多分俺が知っている限りで一番長く、そして今までより一番感情が籠っていたと思う。
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