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チャラ男会計総受け状態。会長×会計
「……ん、」
俺の唇と会長の唇がくっ付く。
まさか自分から野郎相手にキスを仕掛ける日が来るとは…。
って、いやいやいや。これはキスなんかではない。決して違うはずだ。例えこれがキスだと言い張る奴が居たとしても、野郎相手だからカウントされないから大丈夫…、なはず。
もう色々と取り返しが付かないほどに大事な物を失くしてしまったような気もするが、ここまで来たらもはや引き返すことなど出来ない。副会長と双子の庶務だけではなく、また会長と犬塚を失うのは痛過ぎる。だから生徒会と学園の平穏を保つために、俺はきっちりとチャラ男キャラを演じなければ。
チャラ男がキスが下手でどうする。だからどうにかして会長を驚かせる程度にやりきらなければいけない。
もうこうなれば自棄だ。
「、ふ…、ン」
今まで犬塚と会長が俺にしてきた舌使いを思い出しながら、俺はおそるおそる会長の口の中に舌を忍ばせてみた。
だが好き放題にされていた今までとは全く違う事に戸惑ってしまう。
今までは無理やり絡ませようとしてくる舌からただ逃げるだけだった。自分から仕掛けなければいけないのはこんなにも難しくて恥ずかしい事だなんて知らなかった。
「…、っ、」
とりあえず。今までされたように試しに会長の舌に軽く噛み付いてやった。
そして尖らせた舌先でなぞるように会長の舌の裏を舐める。そうすれば互いの唾液が混ざり合ってクチュっと水音が立って余計に恥ずかしくなった。
されるのとするとは気持ちも感覚も全然違う。
何だよ。キスって。こんなにもえっちい事だなんて知らなかったぞ。
卑猥過ぎる。皆こんな事してるのか。破廉恥だ。
とにかく早く終わらせてしまおう。
「ん、…ふ、ぁ」
舌と舌を絡ませてみる。
ぬるぬるした感触がなんとも言えないが、不思議と嫌悪感が沸かないのは何故だろうか。
…あ。目を瞑ってるからかな。そうに違いない。
そして会長の舌をチュッと吸い付く。
初めて自分からキスを仕掛けたけれど意外と様になっているんじゃなかろうか。もしかしたら俺には本当に天性の才能があるとか…?
「………」
今ならば会長の無様も見れるかもしれないと思い、瞑っていた目をコソリとおそるおそる開けてみる。
すると。
「…っ、?!」
合うはずもない目が合って、驚きのあまり俺は会長の口の中から舌を抜き取って二歩ほど飛び退いた。
「な、なな何で、かいちょー、目開けてんの?!」
「ふはっ、…だって、お前、下手くそ」
「……な、ッ」
嬉しそうに笑う会長に恥ずかしくなって、一気に体温がブワッと上がって行くのが分かった。
っ、何でそんなに嬉しそうに笑ってるんだよ。そんなに俺の弱みを掴んだ事が嬉しいのか。腹立つ。会長が「ふはっ」と笑った所なんて俺初めて聞いた。
「必死に舌を絡めてくるお前まじ可愛過ぎ」
「…う、うるさいっ」
一体こいつは何時から目を開けていたんだ。俺はちゃんと瞑ってとお願いしていたのに。まさか最初からなんて言わないよな…?
クソッ。最悪だ。もう死にたい。
だがそれより先にきちんと口止めをしておかないと。
「か、かいちょ…?」
「あ?」
「お…、お願いだから、この事、…誰にも言わないでよ?」
遊び人でセフレが多いという俺のチャラ男キャラが崩れてしまってはいけない。
見上げる形で頼み込めば会長はニヤリと口角を上げて笑った。
あ。嫌な予感がする。
「いいぜ。条件があるけどな」
ほらな。やっぱり。
「……条件って?」
「俺の名前呼べよ」
「へ…?」
…え?それだけで、いいのか?
もっと酷い条件を突きつけられるかと思っていた。
例えば「三ヶ月間俺の仕事をやっておけ」とか、「坊主頭にしろ」とか。
「名前だ。呼べるだろ」
「………」
「おら、言えよ」
「…ほ、焔会長?」
「いい子だ」
だが。
会長が満足そうに笑っているから、これでいいのだと思う。
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