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チャラ男会計総受け状態。会長×会計
「ひ、っん?!」
触れるだけで済んだ前回とは打って変わって濃厚なキス。熱くてヌルっとした会長の舌が、抵抗する間もなく強引に口内に入り込んできた。
「ん、っ、ふ…ァ、っ」
舌先を甘噛みされ、根元を引っ張るように舌を絡め取られてしまえば変に上ずった声が出てしまう。
でも嫌だ。違う。こんな声出したくないのに…っ。
それなのに勝手に反応してしまう自分の身体が嫌で嫌で仕方がない。
しかもだ。
「セフレと遊んでいるチャラ男な会計」としての道を進んでいるというのに、一々キスくらいでこんなに過剰な反応をしていたら俺の素面を疑われてしまう事間違いないだろう。
それに。こんな奴に、未だ童貞のキス未経験者だという事を知られたくない。男女共に経験が豊富であろう会長に馬鹿にされたくはないのだ。
「は、ぁ、ん…ッ、も、いや…、」
だけど。
逃げようにも、自分の身体だというのに己では対処が出来なくなるほどに身体が震えてしまって上手く言う事を聞かない。会長に腰を支えて貰って寄り掛かっているから何とか地に足を付けて立ってられているが、この支えがなくなったが最後。
きっと無様に床にへたり込んでしまうだろう。
嫌だ嫌だ嫌だ。
そんな姿を会長に見せてみろ。きっと卒業するまでずっと「俺のキステクで腰砕けになった癖に」と何かにつけていちゃもんを付けられるに違いない。
「…ふ、っ、はぁ、」
だから俺は絶対に腰を抜かして床にへたり込まないように、会長の着ている制服を両手でギュッと力強く握って縋り付いた。
だがどういうことだろうか。
「は…っ、愛咲、」
俺のその行為が甘えているようにでも捉えられてしまったのか、会長はまるで愛おしい者を見る目で俺を見下ろし、今まで聞いたこともないような甘い声で俺の名前を呼んだ。
しかも極め付けには、俺の顔中にキスの雨でも降らすかの如く唇を落としてきたのだ。チュッ、チュッ、と可愛らしい音を立てて、額や頬、そして鼻の頭や口の端など至る所に優しくキスをされてしまった。
「かい、ちょ…、」
これは色々とやばい。
これではまるで恋人との甘い一時のようではないか。
全然そんな気なんてないのに、雰囲気に飲まれてしまいそうだ。
「だ、めっ」
俺の服を脱がしに掛かろうと動く会長の手を、俺はペチンと叩き落として呼吸を整える。
だがそんな俺の抵抗など、会長は戯れとしか思っていないようで、馬鹿で強姦魔な会長は再度俺の服を脱がそうとしてきた。
その間も怖がる俺を落ち着かせようと優しく頭を撫でたり、背中を摩ってきたりする辺り、もしかしたら本当に言っていた通り、会長は意外と恋愛らしい恋愛をすれば一途で優しい彼氏になるのかもしれない。
だがそんな会長の意外で良い一面を知れたからといって、極めてどうでもいい。
「…もう、だめだってば」
優しくするならば本命の奴でも見つけて、そいつで実践してやれ。
「離してよ」
「此処をこんなにしてる癖によく言うぜ」
「ちょっ、もうやめて…、」
「キスよりもっと気持いいことしてやるよ」
「うるさいっ、バカ!かいちょーのキスなんか気持ちくもなんともないし!むしろキモイし!」
「……あ゛?」
会長のドスの利いた声を聞いて、自分が地雷踏んでしまった事に気が付いたのだが、後悔先に立たずというのはこういう事を言うのだろうと俺はぼんやりと思った。
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