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チャラ男会計総受け状態。会長×会計
何を笑ってるんだこいつは。
その何らかの意味を含んだ会長の笑みに俺は嫌な予感を感じつつも、そのお綺麗な顔の何処に拳をぶち込んでやろうかと思案していた。
自尊心やその他諸々をこいつにバキバキにへし折られたんだ。
鼻の一つや二つくらいへし折っても問題ないんじゃなかろうか。
「……ッ痛、」
だが俺が行動を移すより先に会長の行為は度が増した。
何と俺の指を舐めるだけでは飽き足らず、歯を立ててきやがったのだ。
「い、痛いってばぁ…」
しかもその噛まれている部分が火傷している部分なので相当痛い。偶然にしても酷過ぎる。傷を抉る様に歯を立て、そして齧られる。
「、は…、かいちょ…ぉ」
悔しいがめちゃくちゃ痛い。
だが負けっぱなしなのは気に食わない。
しかもその相手が会長とならば尚更だ。
俺はお返しとばかりに、会長の上顎に爪を立て引っ掻いた。
「……、」
いくら身体を鍛えているといっても、口の中は鍛えられまい。さぞ痛いことだろう。俺の反撃に堪えたのか、会長の動きが止まった。
はっ、ざまあみろ。
今この場でレモンでもあれば良かった。
そうすれば会長の口に突っ込んでやったのに。
おもいきり引っ掻いてやったので絶対傷になっているはずだ。さぞ痛むだろうな。
ばーか、ばーか。
「……ッ、?!」
そんな事を思いながら鼻で笑って会長を見下していたら、会長が再度俺の指に噛み付いてきた。しかも今度は指の根元。まるで俺の指を噛み千切らんとばかりに力を込めて噛んできたので、さすがの俺も少し泣きそうになった。
だがどうやら会長はそれで満足したらしく、チュッと極めて可愛らしい音を立てて俺の指を解放してくれた。
「………」
見るのが怖かったが恐る恐る自分の指を確認してみる。
舐められ、吸われ、噛まれた所為で鬱血しているがどうやら血は出ていないらしい。
だが根元を噛まれた際に付いた歯型が非常に不快だ。
指をグルリと一周しているその歯型はまるで形状のない指輪をしているように見える。
しかも偶然は重なるように、その指は左手の薬指。
「………」
本当、最悪…。
「…かいちょーはさ、」
「あ?」
「吸血鬼か何かなの?」
それとも狼男?と普段より低い声で首を傾げる俺に会長はさも愉快そうに笑ってこう言った。
「お前限定のな」
「…なぁにそれ?」
「そのままの意味だ」
「よくわかんない」
分かりたくもないけれど。
何故俺限定で吸血鬼にも狼男にも変身するのか。どんだけ俺を恨んでるんだよ。確かに俺達はいつも口喧嘩していたが、殴り合いの喧嘩は一度もしたことはない。
もしかしたら会長は今まで我慢していただけで、本当は俺のこと傷付けたかったのかもしれない。多分このまま度が過ぎれば殴られること間違いなしだろう。
……それは、やばいな。
だって俺に勝ち目ないじゃんか。
口喧嘩なら負ける気はしないが、その反対に拳を使っての喧嘩は勝てる確率ゼロだろう。
「じゃぁ今度から俺は、十字架とかニンニクとか持ち歩くことにする」
「はっ、そんな物利かねーよ」
「……だったら、弱点はなに?」
「ない」
さいですか。
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