18
チャラ男会計総受け状態。会長×会計
生徒会室に備え付けられている給湯室に滑り込むようにして入る俺。決して気まずいから逃げたというわけではない。
しかし久しぶりに会ってすぐに「コーヒーを淹れろ」はなくねぇか?俺はお前の召使いでも下僕でもないっつーの。でもまぁ。怒られなかっただけマシか。
…以前転校生の尻を追い掛け回して長い間仕事を放棄していた生徒会長に怒られる筋合いもないけれども。
そんなことを思いながら俺はカップを手に取った。
「………」
黒のラインが入った会長用のカップ。
色違いで買ったこのカップも今では三人分しか扱うことはなくなった。そういえば最近見掛けてもいないが、副会長と庶務の双子はどうしているんだろうか。
副会長は会長とは真逆でコーヒーよりも紅茶派。そして双子はというと兄はコーヒーにミルクを少量、弟はコーヒーに砂糖を少量入れたのが好きだった。
「あいつら元気にしてんのかな…」
六人分の飲み物を用意していた時の事を思い出して懐かしいと感慨深い気持ちになるものの、別に寂しいとは思わない。それは俺が冷たい性格の持ち主だからか、それとも特殊な性癖を持つ(色々な意味で)愉快な二人が残ってくれているからなのか。
おそらく両者どちらもだろう。
ただ少々不安だ。
あいつらの安否もだが。
…今後の生徒会の事も。
「…出来た」
今後どうなるのか、どうすべきなのかは分からない。だけど会長と犬塚が戻って来てくれただけでも今は十分だ。もしかしたら副会長も双子も、二人の様に戻ってくれるかもしれないし。そんな淡い期待を抱くくらいは別にいいだろう。
その事は今後会長と犬塚とゆっくり話し合えばいい。
だから今はコーヒーを待っている会長の元に戻るとするか。
「会長、おまたせー」
若干を声を高めにして語尾を間延びした喋りの俺の姿を見て、会長は掛けていた眼鏡を外した。
日頃は裸眼のようだが、会長は仕事が忙しい時だけ眼鏡を掛けている。その眼鏡を外す仕草さえも見目麗しいのだから腹が立つ。やっぱりイケメンは何をしても様になるものなんだな。
「はい、どぉぞー」
自分で言うのもなんだが、俺も世間一般的に美形に分類される方の立場なのだろうが、やっぱり会長と比べると断然劣る。
早く此処から離れたいと、若干の劣等感を抱きつつ、会長の机に淹れ立てのコーヒーが入ったカップを置こうとした瞬間だった。
「…熱っ、?!」
会長に腕を掴まれたのは。
もちろん淹れ立てのコーヒーが入ったカップを置く前だったので、腕を掴まれた反動で少量だがコーヒーが零れ、その滴が俺の指に落ちる結果となった。腕を掴まれたのは驚いたが、それよりもその熱さが勝る。
「…なに?離してよ」
会長も以前犬塚にコーヒーを頭から浴びせられたから、その事への仕返しだろうか。それならばその抗議は御門違いだ。根本的に最初から会長が悪いのだから。
「離してってば」
苛立ちの所為で若干声が低くなってしまったが仕方のないことだろう。
しかし会長は俺の腕を離すことはなく、俺の手の中からカップを奪い取り、そして机に置いた。
もしかしたら俺も頭からコーヒーを浴びせられるのだろうかと内心冷や冷やした。だってあの時会長が無事だったのは少し時間が経っていたコーヒーだったからであって、淹れ立てであるそれを浴びせられたのであっては無事では済まないだろう。
火傷を心配していた俺は、会長が次に取った行動に息を呑むこととなった。
「……っ、?!」
だって。
滴が掛かった俺の指を会長が銜えたから。
「な、にして…ッ」
この行動には驚いて、逃げるように反射的に腕を引く。だが痛いくらいに腕を掴まれている所為で腕を引く事も、この場から逃げる事も出来ない。
「やめ、っ、ばか…ぁ」
熱い口内の中で会長の舌はヌトリ…と何かを彷彿させるように淫猥な動きで俺の指を舐める。
火傷してしまっているであろうその部分を執拗に舐められて痛みよりも、皮膚が刺激されてむずむずする。
今では瘡蓋になっていて痛くもないはずなのに、一週間前に会長に噛まれた首元が何故だかツキリと痛んだ。何故今頃になってそこがと思いながら、反射的に空いている方の手で首元を押さえれば、会長が鼻で笑った。
→