チャラ男会計の受難 | ナノ


16


チャラ男会計総受け状態。担任+会計



もしかしたらなっちゃんがわざわざ昼休みの時間を使ってまで俺を呼び出した理由はこれなのだろうか。生徒会の仕事を放棄している俺を咎めに来たのかもしれない。それならば俺以外の生徒会の奴等も、一度はなっちゃんに呼び出されたことがあるのか?


「何で、その事知ってるの?」

「馬鹿。生徒会の顧問は俺だ」

「そんなことは知ってるけどぉ…」

でもなっちゃんは今まで生徒会室に顔を出した事はなかったじゃないか。それどころか今までなっちゃんと生徒会の事について話したことすらない。しかも俺は生徒会メンバーの中で唯一、一年からなっちゃんの受け持っている生徒だというのに。


「俺が…生徒会の仕事サボってるから怒ってる?」

「…何かあったのか?」

てっきり怒られると思っていた。
当たり前の事だ。生徒の代表として選ばれておきならが自分の仕事を放棄しているのだから。
だけどなっちゃんの声は俺を咎める様な口振りではなく、極めて優しいものだった。
おもわず今まで溜めていたストレスや不満や不安をぶちまけて甘えてしまいたいくらいに。

「べ、つに…ぃ」

でも俺はそれを寸前の所で止める。
言葉にして聞いて貰えれば少しは楽になったのかもしれない。

だけど
人に甘えるのは…、正直苦手だ。


「何でもないから放っておいてよぉ…」

その内ちゃんと生徒会のお仕事をするから今回は許して、と俯きながら付け加えれば、再度髪の毛を掻き混ぜるようにわしゃわしゃと頭を撫でられた。


「な、なに…?」

何で頭撫でんの?
今の俺はどちらかというと褒められるより、叱られるような態度を取ったつもりなんだけど。


「別に。お前が撫でて欲しそうな顔してたから」

「は、はぁ?!」

「何だ?違ったのか?」

「当たり前でしょ!…子供扱いしないでよっ」

やっぱり俺はなっちゃんが苦手だ。自分のペースが上手く作れなくなる。似たような性格をしているはずなのに会長とは全然違うな。
頭に乗せられている頭を少し乱暴に払いのければ、「そういう所も餓鬼っぽいぞ」と言われて、ちょっとむかいついた。

そしてなっちゃんの脈絡のない話はまだ続く。


「…お前が居ないと駄目だとよ」

「は?急に何言ってんの?」

「生徒会長と書記の奴」

「……な、にそれ」

なっちゃんの話はこうだ。
昨日久しぶりに生徒会室まで書類を届けに行ったら俺の姿は見えなくて、苛立った雰囲気を醸し出したまま、無言で机に向かい合う会長と犬塚の姿だけがあったらしい。

やはり六人分の仕事を二人に押し付けたのは不味かったかもしれない。だって今でどんなに忙しくてもそんなに部屋の雰囲気が悪くなることなんてなかった。


「二人に苛められたのか?」

「イジメられてはないと思う…」

多分。
イジメのように悪質な事はされたけれど。
犬塚に至ってはあれはあいつなりの愛情表現のようだし。会長の件については犬に噛まれたとでも思っている。


そういえば。
二人の声も暫く聞いてないな。


「………」

…一週間。
たった一週間生徒会室に行っていないだけなのに、妙に物足りないと思っていた原因がなんとなく分かったかもしれない。

会長が偉そうに座りながら書類見てて。
犬塚の隣で俺がパソコンの操作を教える。
時には茶々を入れあったり、口喧嘩したり。
六人から三人へと人数が減ったものの、仕事は忙しくても俺はあの独特な雰囲気を意外と気に入っていた。
セクハラ紛いの事をされるのは嫌だけれど、確かに俺はあの空間が好きだったのだ。


「…なっちゃん」

「何だ?」

「あのね。俺、今日…生徒会室に行くよ」

「…そうか」

「うん」

「あんまり根詰めんなよ」

「…うん」

正直二人と顔を合わせるのは気まずい。
でもまずは一週間仕事をサボっていたことを謝ろう。そしてその後、二人を殴ってから一週間前のことを謝らせよう。
それで色々な事がチャラになればいいな。

そんな事を思いながら、俺はまずはこの大事なことに気付かせてくれたなっちゃんにお礼を言うことにした。


「なっちゃんも一応先生なんだね」

「阿呆か」

「教師じゃなくてホストになれば良かったのにとか常々思っててごめんなさい」

「しばくぞ」

「うん。だからね…、」

「……あ?」


眉間に皺を寄せる先生を見て、俺はクスリと笑う。


「ありがと、せんせ」


本当にこういう時はチャラ男キャラをやっていて良かったと思う。こんな照れ臭い台詞、普通の俺だったら絶対に言えない。
便利だしもういっそのことこのままチャラ男キャラで突っ走って行こうかな。
そんなことをぼんやりと考えていると、またもや頭を撫でられた。


「…わ、」

しかも今度はちょっと力強い。
ぐわしぐわし頭を撫でられても全く気持ち良くない。
なになに?やっぱりまだ怒ってるのかよ?
でも俺はそれなりになっちゃんのこと尊敬してますよ?そんなこと絶対口には出さないけれど。

「ちょっ、痛い、いたいよっ」

「うっせ。馬鹿」

口角を上げながら俺の頭を掻き回すなっちゃんに、おもわずつられて俺も笑ってしまう。

少し乱暴で口も悪い所があるけれど。
やっぱり俺の担任がなっちゃんで良かった。






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