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チャラ男会計総受け状態。書記×会計
「ん、っぅ?!」
二本の指と、そして熱い舌。
その口付けからは優しさや甘さなど微塵も感じ取れない。こいつとのキスはいつだってそうだ。
「、ふ…ぁ」
ただ我武者羅。
現に犬塚の表情を見ればそれが分かる。俺とキスしたいのならば少しは嬉しそうな表情でもすればいいのに、眉間に皺を寄せて苦しそうだ。
その理由は分からない。分かろうともしない俺が原因なのかもしれない。もしかしたら俺が抵抗ばかりする所為だろうか。
だがどちらにせよ被害者は俺なのだ。
それなのに仕掛けてきた相手が俺以上に眉間に皺を寄せているのが気に食わない。
その事に腹が立って挿し込まれたままの指を再度噛んでみる。
「ッ、ん…ン」
だけど結構強く噛んだというのに犬塚は動じない。
むしろどちらかというと、抵抗を重ねる俺に煽られたかのように舌の動きが激しくなった。
「ひ、ぁ…ん、っ、ぅ」
「愛、咲…」
器用に二本の指と舌を使って、俺の口内を掻き回してくる。尖らせた舌先で上顎を舐め、指で内頬をなぞられれば嫌でも変な声が出てしまうのは仕方のないことだと思いたい。
「ふ、…ン、んっ」
それに。
男とのキスは嫌だけれど、気持ち良いという事実は否めない。それが人間の性というものなのだろう。
だが高二にもなって人前で涎を垂らすのは如何なものだろうか。実際今凄く恥ずかしい。せめて零さぬように飲み込もうと試みるのだがそれも出来そうにない。
犬塚もその事に気が付いたのだろう。
俺の口の中から舌を抜いて、顎から唇に掛けて、下から上へと俺が飲み込めなくなった唾液を舐めていった。その際、俺の口の中に入れていた指も抜いてくれたのだが、犬塚の指と俺の舌の間に唾液の糸が引いていて、それが妙に艶めかしく思えた。
「………」
よく他人の唾液なんて舐めれるなと、他人事の様に思ってみる。どうやら一気に色々な事が有り過ぎて逆に冷静になれたようだ。
「…お前さ、」
「………」
「俺の事好きなの?」
自分で訊くのはどうかと思う。
だけどはっきり言葉にして貰わないと分からない。
「…どうなんだ?」
「…好きだ」
「………」
「好き」
頬をそっと撫でながらそう言われた。
こいつにしてはいつもよりはっきりとした大きい声。
いつもならば問答無用にその手を振り払うのだが、さすがの俺でもそれは止めておいた。
「…分かった」
俺はそう言って、立ち上がる。
「とりあえず。保健室で手当てしてくれ」
今日は保険医が居ないからな。
犬塚への返答は後日だ。と言えば、どうやら納得したようで、少し嬉しそうに後を付いてきた。その姿はまさしく犬のようでちょっとウケた。
「だけど変な事してきたら、即蹴るからな」
「………、ああ」
その妙に長い間は何だと問いたい。
だが一応頷いてくれたし大丈夫だろう。そう思い、俺は犬塚と二人で保健室に向かったのだった。
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