お前色に染まっちまいそうだ
俺たちが来たのは別館の男子便所。
わざわざこんな所で用を足す奴が居ないからなのか、意外と綺麗だ。隣に居るひかるを見れば、目を輝かせて居るのが分かった。
…ったく、本当に馬鹿だなこいつ。
「おい、」
「よし!ここに決定!」
「……チッ」
「ほら、海斗。中に入った、入った!」
もう此処まで来たら引き返すつもりはない。だが当たり前の事だが乗り気もしない。
俺はひかるに押されるまま個室に入った。
「海斗、座って」
「…本気か?」
「本気、本気。超本気だから!」
「本当に後悔しねぇのかよ?」
「後悔?しないよ?」
「…分かった。」
こいつは馬鹿な上に頑固だから一度言い出したら止まらないことは重々承知している。しかしそんなひかるの側に居続ける俺も同じ馬鹿なのかもしれない。
だが「好きにしろ」とまでは絶対に言ってやらねぇ。
言えばこいつは何処までも調子に乗るだろうし、第一に主導権を握られるのだけは絶対に嫌だ。
俺は一度溜息を吐いた後、蓋がされた便座の上に腰を下ろした。するとひかるは片方の膝だけを床に付き、俺のベルトに手を掛ける。
「……」
俺はそれを無言で見下ろした。
改めて考えても、今の状況は絶対におかしい。ひかるは男で、そして俺も男。それに俺達は世間一般的に友人という仲だ。それなのに何故…。
今更そんな事を考えても意味のない事だが。
こいつの馬鹿さに呆れ、俺は頭を悩ましているというのに。ひかるは相変わらず楽しそうに俺のベルトを緩め、そして俺の下着に手を掛けている。
俺はもう何も言わずに、ただひかるの様子を見ているだけ。すると不意にひかるが顔を上げ、俺の顔を覗き込んできた。
「…何だ?」
「何か今更ながら、ドキドキしてきた!」
「…止めるか?」
「冗談言うなよ。ここまで来て止めるわけにはいかないっしょ」
餓鬼のように純粋無垢に目を輝かせているというのに、こいつの行動は極めておかしい。
下着を少しずらし、外に出た俺のペニスを見て驚いている。
「…で、でかっ」
「感想はいらねぇ」
「だって、俺のとは全然違う。むかつくっ」
自分の股の下にも同じような物がぶら下がっているはずなのに、ひかるは俺の物を見て驚いている。非常に居心地が悪い。
「ね?…舐めて、いい?」
「…ああ」
「へへ、いただきまーす」
しかしひかるは戸惑いながらも目を輝かせながら、俺のグロテスクなペニスを片手で支えると、赤い舌を出してペロリと舐めてきた。
「…ふ、ぁ、」
覗き見える赤い舌が妙にエロく感じる。
子猫のように舌を出して何度も舐める仕草は妙に愛らしくも思えてしまう。そんな事を思ってしまっている俺はきっとこいつと同様。いかれてる。
ピチャっと水音が聞こえてきて、おもわず背筋が震えてしまった。阿呆なこいつに良く似合っている柔らかそうな天然パーマの髪の毛を撫でてやろうと手を伸ばす。
「…ん、…俺、今、女の人のアソコ、舐めてる…っ」
だが聞こえてきたひかるの台詞に、一瞬にして現実に戻された。俺は伸ばした手を戻す。
…そうだ。
こいつは俺を通して女の想像してやがるのだ。
無性に、腹が立つ。
悦に入った顔をしながらペチャペチャと俺のチンポを舐めるひかるは可愛いのに全然可愛くない。
俺だけを見ないこいつは可愛くなんて、ない。