50cm・番外 | ナノ

 ○○を圧し折る

本編3話目と17話目辺りを捏造。IF話。高木×猿渡←犬飼/高木視点


放課後に残ってくれと呼び出された。
女子に呼び出される事は今まで数回あったものの、男子から呼び出されるのは初めての事だ。しかもその相手は猿渡の嫌いな人物だから苦笑物。
まぁ、用件は聞かなくても大体分かるけど。


「お前は猿渡の事が好きなのか?」

…ほらな?
思った通りだ。

「好きだよ」

だから俺は即答してやった。それはもう重ね気味に。
そうすれば案の定犬飼は俺を睨み付けてくる。
目を細めてギロリと冷たくも何処か熱く鋭く睨み付けられれば、普通の奴等はその場から逃げ出すだろう。

だけど俺は違う。

「…それは友情としてか?」

「いいや。お前と同じ意味で好きだけど?」

だから何?それがお前に何か関係ある?
口元を歪めて挑戦的に笑みを浮かべて、そう言葉を続ける。

こいつが猿渡に好意を寄せているのはすぐに分かった。
そりゃそうだ。同士だからな。
犬飼が猿渡を好きになるより早く、俺の方が猿渡の事が好きになっていたから。
あいつの馬鹿な所、照れ屋な所、泣き虫で弱い所も笑顔が可愛い所も全部含めて好き。もちろん友情ではなく。普通は異性に向けるであろう恋情の意味で。
それに猿渡と談笑する度に一々強烈な視線を受けていれば、嫌でも気付くという話だ。

「お前さあ、あんまり睨むなよな。猿渡が自分に向けられていると思って怯えてるんだよ」

「………」

「まっ、怯えてる姿もすっげぇ可愛いけど」

その時の猿渡は目がキョロキョロ泳いでいて、不安定な感じ。普段強気で意地っ張りな猿渡からそんな弱い部分を見せられたら「可愛い」、「守ってやりたい」と思ってしまうに決まっている。惚れてるからな、そう思うのが極普通の事だろう。

ああ、でもそうか。

「お前はいつも後ろから眺める事しか出来ないから、その表情すらも見たことすらないのか」

残念だな、と外面では同情してやるものの、内心は「ざまあみろ」と嘲笑う。
猿渡には嫌われているくせに、妙に構われているこいつが俺は嫌いだ。
それはもう、猿渡の言う“嫌い”を越す程に…。


だけど。
一つだけ。これだけは犬飼には感謝だな。

「いつも猿渡の可愛い顔見せてくれてありがとな」

怯えているのを悟られないように眉尻を下げてふにゃりと笑う猿渡はマジで可愛いから。
その事を笑みを浮かべて伝えれば、胸倉を掴まれた。

「…ふざけるな!」

馬鹿にされたと思ったのだろう。
全く普段のクールさは何処に行ったのやら…。
俺なりの気遣いだというのに、返ってきたのはこの仕打ち。
…ったく、ツイてねぇぜ。

まぁ、そう思われても仕方ないけど。

「…痛ぇよ。離せ」

パンッと手を払ってやれば、思ったよりも簡単に拘束はなくなった。

「俺と同じ土俵にすら立てないくせにうぜぇんだよ、お前」

「…っ、貴様」

「あんまり俺の猿渡を見るんじゃねぇっつーの」

自分でも少し驚く程の低い声が出た。

何で俺はこんなにも苛々しているんだろうか。ただ目の前の犬飼が嫌いで目障りなだけでこうもなるだろうか。ライバルにすらならないこいつなんかに。

「あいつはこれからも俺だけのだから」

あー。そうか。
こいつの所為で今日猿渡と一緒に帰れなかったからか。
なるほど、納得。明日はB定食一緒に食べて、そして部活サボってでも一緒に帰ろう。
明日のことを考えると、少し機嫌が良くなってきたような気がする。
何という現金な奴なんだ、俺は。
まぁ、恋に溺れた青少年なぞこんなもんだよな。

帰ったらメールでもして機嫌を取ってやろう。そんな事を考えながら犬飼を置いて俺は教室を後にした。


END





高木すげぇ嫌な奴(笑)
でも恋をした人は少なからず男も女も年関係なく汚くなる時があると私は思います。それがライバルがいれば当然ね。
本編を書いたのが2年前くらい?それくらいからずっと高木×猿渡を書きたかった!念願叶ったぞ!今更だけど!
ストーカー属性の犬飼も好きだけど、ヤンデレ属性の高木も好き!




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