▼ 俺の理性は崩壊寸前
「恋は五月雨」の続編。雷君視点。今の状態をなんと説明したらいいのか。
だがしかし。
今の俺には順を追って話す余裕もない。
むしろ俺の方こそ説明が欲しいくらいだ。
いつも通り俺は順平の部屋に居た。
密室の中で変な気を起こして嫌われないよう、必死に正常心を保とうと持参した本を読んでいたのだ。もちろん談笑を交えながら。
視線は本に向けながらも、順平の話していた内容を一言一句逃さぬよう冷静に頭に植え付けていたら、不意に肩を掴まれた。
「……?」
反射的に本に向けていた視線を上げれば、驚きよりもまず先に胸が高鳴った。
…何故なら俺の目に順平の顔が至近距離で映ったから。
それからは俺が声を上げるよりも順平の行動の方が速かった。
「……っ、」
唇と唇が重なり合う。
まるで俺に何も言わせないかのような強引で不器用な順平の口付け。それは世辞でも上手いとは言えない下手くそなもの。だがそれが余計に嬉しくて堪らない。
柄になく胸が締め付けられたのが分かった。
「んっ、ぁ…」
可愛い。何て可愛い生き物なんだ。
このままその細い腰を抱き寄せ、後頭部に手を回し、嫌だと言われても窒息するほど口内を掻き回してやりたい。だがそれと同じようにこのまま順平が与えてくれる拙いキスを味わっていたいという気持ちもある。
「ふ、ぁ…ァ」
もうどうしようもない程に愛しているというのに、これ以上…、これ以上に俺を夢中にさせてどうするつもりだ。一生どころか後世でも責任を取ってもらおう、そんな事を考えていたら少し歯がぶつかり合った後に順平の柔らかく甘い舌が入り込んできた。
このままその舌を噛み千切って咀嚼して、胃の中さえも順平のもの一色に染めたい。
「ん、雷くん…っ、ン」
そして俺たちはベッドに倒れ込んだ。いや、「順平に押し倒された」と言ったほうが正しいのかもしれない。まさか順平に押し倒される日が来るとは思っていなかったものだ。だからこそ俺はかなり驚いていたりする。
「ふァ、んっ、ちゅっ、ン」
こうしていると初めて順平とキスをしたときのことを思い出す。「俺が練習台になりましょうか?」なんて頬を赤く染め上げ、声を震わせながら言った順平の可愛い姿は一生忘れられないだろう。
震える唇は熱く、それでいて柔らかく。まるで甘い果実のようだ。中に舌を進入させ口内を味わえば、俺の心臓は煩いほど高鳴り、欲に忠実に自身の物は硬く勃ち上がる。
「ら、い君、ン、ん…すきぃ…っ」
そんな可愛い台詞を愛する人から言って貰い、我慢出来る男はこの世に居るのだろうか。少なくとも俺には出来ない。自分からも積極的に舌を絡め、順平の口内を掻き回す。そして少し乱暴に下から腰を突き上げる。絡まる舌も、触れ合う身体も、どれもこれも媚薬のように俺を狂わせるのだ。
もっと、もっと順平が欲しい。
「っ、ン…?!」
すると今までトロンと目を蕩けさせていた順平が急に目を見開いた。
「ら、雷君…?!」
驚きに目を見開いているのだろう。
一体何に驚くことがあるのか。
俺は順平の腰を掴み引き寄せ、自分の腰を動かしながら疑問に思った。
しかしそれからすぐに順平は俺から逃げるように離れていった。
「あ、あの…ご、ごめんなさい…っ」
何についての謝罪だろうか。
俺は順平から謝られる事などされてはいない。
むしろ感謝したくらいだ。
俺は自分の唇を指の腹でなぞりながら、先程の事を思い出す。
「雷君…?」
ふわりと香る甘い匂い。
滑らかな白い肌。
柔らかくふっくらした唇。
熱い口内に、漏れ聞こえる喘ぎ声。
どれもこれも俺を夢中にさせて狂わせる。
そうだ。
俺に謝罪などいらない。
そんなものよりも、もっと順平の全てが欲しい。
誘ってきたのは順平だ。
据え膳食わぬは男の恥と言うだろ?
「っ、わ?!ら、雷君?!」
今日こそ順平の全てを喰ってやる。
そう思って抵抗する順平のズボンを脱がし、柔らかそうな白い尻が目に入りむしゃぶり尽くそうとした瞬間、颯爽と順平の妹からの罵声が飛んできたのは言うまでもない…。
END
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