今の状態をなんと説明したらいいのか。なんと弁解したらいいのか。


…順を追って話そう。


いつも通り俺と雷君は、俺の部屋で寛いでいた。
本を読んだり、他愛もない話をしたり、することはその日その時によって違う。事が起こる数分前は、互いの学校生活を教え合っていたのだ。
俺は恥ずかしい事に勉強なんて禄にせずに、休み時間になれば友達と喋っているなんて苦笑いを浮かべて話していた。

一方の雷君はといえば休み時間は専ら本を読んでいるそうだ。きっといつも俺の家に持参している、俺には理解出来なさそうな難しい本を読んでいるに違いない。
それに同じ学年だというのに勉強の進みも遥かに速いようだ。話している内に、やっぱり雷君は格好良くてすごい人なのだと思った。

でも思った事や感じた事はそれだけではない。


…雷君が喋る度にチラチラと垣間見える赤い舌がとてもいやらしく見えて仕方がない。あの赤くて妖艶な舌で口内を掻き回されたときのことを思い出すと、興奮して背筋が震えてしまう。


あの唇に無性にしゃぶりつきたくなった。



「んっ、ぁ…」


そして俺は現在進行形で、自分から雷君の唇を奪ったのだった。事の始まりを冷静に整理しているように思えてしまうだろうが、実際プチパニック状態だ。
一度くっ付けてしまった唇を離すなど、そんな勿体無いことはしたくないし、このまま欲望の赴くままに貪りたい。


「ふ、ぁ…ァ」


それに雷君はというと、まさ俺がこんな行動に出るなんて思ってもいなかったようで、驚きに目を見開いている。抵抗するわけでもなく、雷君から仕掛けてくるわけもなく。ただ俺にされるがままだ。


「ん、雷くん…っ、ン」


もうこうなったらとことん調子に乗らせて貰おう。
俺はベッドの上に座っている雷君の肩を掴み、力を入れて雷君を押し倒してみることにした。
ビクともしないかと思っていないのだが、意外にもあっさりと雷君はベッドの上に倒れ込んだ。それに従い俺も雷君の上に倒れ込む。より距離が近くなったような気がする。


「ふァ、んっ、ちゅ、ン」


こうしていると初めて雷君とキスをしたときのことを思い出す。「俺が練習台になりましょうか？」なんて突拍子もなく恥ずかしい事をよく言えたものだ。今思い出しても恥ずかしい。

でも、あの言葉のお陰で武宮さん…、雷君とキス出来たんだよな。そう考えると当時の俺は少しだけ運が良かったのかもしれない。あの日の夜はもう死にたくて死にたくて仕様がなかったけれど。


「、ん…ふ、ァ」


本当に雷君に出会えて良かった。
本当に雷君を好きになって良かった。
本当に雷君に好きになってもらえて良かった。


「ら、い君、ン、ん…すきぃ…っ」

俺の舌よりも分厚い雷君の舌に自分の舌を絡める。
下手くそながらも息継ぎをしながら必死に雷君を求めた。絡まる唾液が、絡まる舌が、とても卑猥で気持ちがいい。

もっと、もっと雷君が欲しい。


「っ、ン…？！」


しかしふとある事に気が付いた。
下に居る雷君の硬くなったペニスが俺の下腹部に当たっているということに。


「ら、雷君…？！」


ゴリッとあたるそれは紛れもなく勃起していて…。
気が付くと俺のペニスも勃起していた。
その事実に、キスに没頭していた俺は、急に恥ずかしくなって絡めていた舌を抜き取り、唇を離した。


「あ、あの…ご、ごめんなさい…っ」


ふしだらな行為に走ってしまった事をすぐに謝ったのだが、雷君からの返事は返って来ない。もしかして怒っているのだろうか？それとも呆れているのだろうか？


「雷君…？」


しかし一向に雷君は反応しない。
先程まで俺が貪っていた唇をゆっくりと指の腹でなぞるだけで、何も言わない。さすがに俺も不安になってきた。


「……？」


そしてそれから雷君が正気に戻ってくれたのは、40分もの後だった。

正気に戻ったや否や、すぐに押し倒されてしまったのは言うまでもないだろう…。



END


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