短編集 | ナノ

 君と熱中症


妹の彼氏(武宮雷)×兄(雨宮順平)/君に熱中症の続き/順平とその友人達の会話





昼休み中に友達と一緒にご飯を食べていると、近くに居た二人が急に楽しそうに笑い出した。


「ははは、お前まじ天才!」

「だろ?俺、自分でも天才だと思った」

「ふは、調子乗んなよ、うぜーっ」


そんなに楽しそうに話をしていたら、会話の内容が気になってくる。おにぎりに齧り付きながら「何の話?」と訊ねれば、二人は悪戯っ子のようにニヤニヤしながらこちらを向いた。


「なぁ、順平。“熱中症”って言ってみな」

「え?何で?」

「いいから、早く言えって」

「熱中症…?」

「もっと、ゆっくり」

「ねっちゅう、しょう…」


指示された通り「熱中症」という言葉をゆっくりと発音した所で気が付いた。前にもこのような事があったのだと。

あれは確か、雷君に言われて…。
結局意味の分からないまま、その後にキスされたんだよね。やっぱりこのフレーズに何か意味があるのかな?


「ねぇ、これどういう意味?」

「どういう意味も何もそのままの意味だろ」

「そのままって…?」

「熱中症。ゆっくり声に出すと、違う意味になるんだよ」

「違う意味?」


熱中症。
ねっちゅうしょう。
ねっ、ちゅう、しょう。


「……、?!」


“ねっ、チュー、しよう?!”



「なっ、こ、これって…!」

「あ、意味が分かったか。な?すげぇだろ、これ」

「考え付いたの俺だぜ。まじで俺天才だろ?絶対これを思いついたのは俺が一番だな!」

「あのコンビニの可愛い店員に言わせてぇな」

「首を傾げながら、最後の方を疑問形のように読んでくれたらなお良し!」

「………」


盛り上がっている所悪いけど、確実に二人よりも先に思い付いた人が一人居たのは間違いない。
…だって、俺がこの前雷君に言わされたから。


「……っ、」

そうか、あの時のはこういう意味だったのか。
だから「煽り上手だな」とか言われてしまったのか…っ。

うわー、理解していなかったとはいえ、恥ずかしい事を連呼してしまった。帰ったらどういう顔をして雷君を見ればいいんだ。


「順平?」

「っ、え?!な、何?」

「顔赤いぞ?」

「な、な、何でもないよっ」

「ふーん、エロい事でも考えてたんじゃねぇのか?」

「はぁ?違うから!」


雷君の事を考えていたけれど、エロい事を考えてはいない。断じて違う。誤解だ!


「順平のむっつりスケベー」

「ば、馬鹿!そういうことを大声で言うなよっ」


ああ、もう!
クラスの女子からも笑われてしまったじゃないかっ。

どれもこれも全部雷君の所為だ!
雷君が俺にあんな事を言わせた後、キスをしてくるから…。だからこんなに意識してしまうんだ。だからこんなに顔が熱いんだ。


くそー。
悔しいなぁ。
俺は雷君が居ない今でさえ、雷君が恋しいというのに。こうなったら帰ったら雷君にも「熱中症」って言わせてみよう。

そして言ったのと同時に俺からキスしてやるんだっ。


そしたら…雷君の頭の中も俺と同じように、俺でいっぱいになる、…よね?



END



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