▼ 君と熱中症
妹の彼氏(武宮雷)×兄(雨宮順平)/君に熱中症の続き/順平とその友人達の会話昼休み中に友達と一緒にご飯を食べていると、近くに居た二人が急に楽しそうに笑い出した。
「ははは、お前まじ天才!」
「だろ?俺、自分でも天才だと思った」
「ふは、調子乗んなよ、うぜーっ」
そんなに楽しそうに話をしていたら、会話の内容が気になってくる。おにぎりに齧り付きながら「何の話?」と訊ねれば、二人は悪戯っ子のようにニヤニヤしながらこちらを向いた。
「なぁ、順平。“熱中症”って言ってみな」
「え?何で?」
「いいから、早く言えって」
「熱中症…?」
「もっと、ゆっくり」
「ねっちゅう、しょう…」
指示された通り「熱中症」という言葉をゆっくりと発音した所で気が付いた。前にもこのような事があったのだと。
あれは確か、雷君に言われて…。
結局意味の分からないまま、その後にキスされたんだよね。やっぱりこのフレーズに何か意味があるのかな?
「ねぇ、これどういう意味?」
「どういう意味も何もそのままの意味だろ」
「そのままって…?」
「熱中症。ゆっくり声に出すと、違う意味になるんだよ」
「違う意味?」
熱中症。
ねっちゅうしょう。
ねっ、ちゅう、しょう。
「……、?!」
“ねっ、チュー、しよう?!”
「なっ、こ、これって…!」
「あ、意味が分かったか。な?すげぇだろ、これ」
「考え付いたの俺だぜ。まじで俺天才だろ?絶対これを思いついたのは俺が一番だな!」
「あのコンビニの可愛い店員に言わせてぇな」
「首を傾げながら、最後の方を疑問形のように読んでくれたらなお良し!」
「………」
盛り上がっている所悪いけど、確実に二人よりも先に思い付いた人が一人居たのは間違いない。
…だって、俺がこの前雷君に言わされたから。
「……っ、」
そうか、あの時のはこういう意味だったのか。
だから「煽り上手だな」とか言われてしまったのか…っ。
うわー、理解していなかったとはいえ、恥ずかしい事を連呼してしまった。帰ったらどういう顔をして雷君を見ればいいんだ。
「順平?」
「っ、え?!な、何?」
「顔赤いぞ?」
「な、な、何でもないよっ」
「ふーん、エロい事でも考えてたんじゃねぇのか?」
「はぁ?違うから!」
雷君の事を考えていたけれど、エロい事を考えてはいない。断じて違う。誤解だ!
「順平のむっつりスケベー」
「ば、馬鹿!そういうことを大声で言うなよっ」
ああ、もう!
クラスの女子からも笑われてしまったじゃないかっ。
どれもこれも全部雷君の所為だ!
雷君が俺にあんな事を言わせた後、キスをしてくるから…。だからこんなに意識してしまうんだ。だからこんなに顔が熱いんだ。
くそー。
悔しいなぁ。
俺は雷君が居ない今でさえ、雷君が恋しいというのに。こうなったら帰ったら雷君にも「熱中症」って言わせてみよう。
そして言ったのと同時に俺からキスしてやるんだっ。
そしたら…雷君の頭の中も俺と同じように、俺でいっぱいになる、…よね?
END
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