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「わっ、?!」
降りる場所は二人ともまだまだ先。それなのに雷君は、先程言っていた通り今着いた停車駅で降りようと俺の腕を引っ張ってきた。雷君のその乱暴な立ち振る舞いに驚きながらも、新鮮なその様子に少しだけキュンっとしてしまう。
「あ、あの…、」
「………」
「雷、君?…学校まだ先ですよ?」
ガヤガヤと五月蠅いホーム。雷君は人ごみを掻き分けながらズンズン進んでいく。掴まれた腕は少し痛いけれど、全然嫌じゃない。むしろ俺は嬉しいとさえ思っている。
「雷君っ」
だけどこのまま何処に行くんだろう。
俺の蚊の鳴くような小さい声は、果たして雷君に届いているのだろうか。
…俺から見える雷君の横顔は何処か切羽詰った様な表情をしていた。
*****
腕を引っ張られて連れて来られた場所は、駅のホームに設置されている男子トイレ。最近改装されたばかりだったから綺麗。何故こんな場所に連れてこられたのだろうと悩んでいる内に、雷君は一番奥の個室トイレに俺を無理やり押し込み、その後に雷君も入ってきた。そして雷君は中から鍵を掛けたのだ。
「っ、ぁ?!」
するとすぐにトイレの扉に押さえつけられてしまった。
痛みに声が漏れる。いきなりの事に驚いて雷君を見上げてみたら、ギラリと鋭い目付きの雷君と目が合った。
「……っ、?!」
雷君のその目を見て、本能で察した。
食べられる、と。
「ん、っ、ぁ…ッ!」
近付いてきた雷君の顔。
蛇に睨まれた蛙の如く、俺の身体は一ミリも動かなかった。そして抵抗出来ずに居る俺の後頭部に雷君は手を回し、荒々しい口付けをしてきたのだ。
「は、ァ…っ、ン」
触れるだけ、なんて甘く優しいキスではない。
全てを貪る様な激しく乱暴なキスと言った方が正しいと思う。今の雷君のキスは文字通りに荒々しいのだ。もう息をする方法すら分からないくらいに、俺の口内を舌で掻き回しグチャグチャにする。
「や、っ…はァ…ふ、」
だけど流石に息苦しくなってきた。ほんの少し出来るキスの合間にはふはふと一生懸命空気を吸い込むのだけれど、それすら許してくれないのか、またすぐに雷君の濃厚な口付けが始まる。
「ん、ンっ、ゃぁッ」
後頭部を押さえつけられ、そして腰を引き寄せられているため逃げれない。俺はせめてもの抵抗に、力の入らない拳で雷君の胸板を叩く。
すると意外にもすんなりと雷君は離れてくれた。
「……は、ぁ、はぁ…っ」
「順平…」
「……っ、ァ」
驚くほど熱っぽい雷君の声。
ねっとりしたような熱い声で名前を呼ばれ、ゾクリと身体が震えてしまった。
「雷、君……どう、して…?」
「順平が悪い」
「……え?」
「いつも必死に抑えてた」
「……?」
「だけど順平が煽るから」
「…っ、ぅぁ…?!」
「もう、…こんなになっちまった」
先程のキスで緩く反応してしまった俺の下半身に、雷君の下半身が擦りつけられた。するとゴリッと当たるその硬い物体。男である俺ならその正体はすぐに分かる。
「順平の所為だ」
「……ら、い…くん」
「だから順平が処理しろよ」
獣のような低い声で命令される。そして俺は手を掴まれ、そのまま雷君の下半身へと導かれた。
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