短編集 | ナノ

 洪水警報発令中


R-15/「暴風に立ち向かう」の続き





順平の家はどうやら複雑な環境にあるようだ。
滅多なことでは両親は家に帰って来ないらしい。だからこそこの兄妹の絆は強いのだろう。二人の兄妹愛には感服する反面、何処か嫉妬してしまう自分も居る。
正直毎日一緒に居られるのがとても羨ましい。欲を言えばこのまま俺だってこの家に住みたいくらいだ。
だがしかし、それを順平の妹に言えば「雷君はすぐお兄ちゃんに手を出しそうだから駄目ー」と間延びした喋り方で言われてしまいそうだ。


「……」

だが今は滅多に出ない許しが出た所だ。
「寝ている順平の寝顔を見てもいい」との事。手は出すなと言われてしまったが、順平の寝顔が見れるだけでも俺には十分過ぎる程の褒美。
階段を上り、順平が起きないように最善の注意を図りながら扉を開けた。


「………」


扉を開けれてすぐ視界に入ってきたのは、星柄の寝間着を着ている順平の姿。俺が邪な気持ちを抱いていることなど気付くはずもなく、可愛らしい顔をして寝ている。
より一層幼さが増す順平の顔に、そっと手を伸ばしてみた。


「………」


順平が起きないように優しく撫でる。
まずは頬、そして鼻、瞼、そして最後に唇。指の腹で触れるだけでも至福感を味わえる。
「寝顔を見るだけ」、「手を出すな」と言われていたが、こんな無防備な姿で寝ている順平に手を出さずに居られるはずがない。後で怒られてしまうのは承知の上で、俺は順平の口の中に指を入れてみた。


「…ん、ぅ」

「……」


順平はまだ起きない。
俺はそれを良い事に、少し奥まで指を入れる。そうすればクチュっと唾液が絡まるような水音が鳴り、より一層俺の興奮を高める。


「順平、」


本当に可愛い。愛おしくて堪らない。
俺の指に軽く歯を立てつつも、時折吸いついてくる。熱い舌に舐められる感触に、これが指ではなかったらと…卑猥な事を考えてしまうのは仕方がないことだろう。

俺は我慢ならずに指を抜き、そしてそのふっくらとした唇に噛み付くようにキスをした。もしかしたら順平を起こしてしまうかもしれないと思いながらも、もう自分を止めることなど出来なかった。配慮など出来そうにない。


「……、」

「…は、っ」


まだ目を閉じ寝ている順平の口の中に舌を忍ばせる。絡ませるように順平の舌を舐めれば、それに応えるように順平も舌を動かしてくれる。それが尚更嬉しい。


「…っ、ン」

「……、」


順平の口内を貪り夢中になっていると、ある事に気が付いた。…順平のペニスが反応している事にだ。どうやら寝ているというのに俺のキスで感じてくれているらしい。


「……順平」


そっと首筋に舌を這わせながら、順平の下半身に手を伸ばしてみる。硬くなっているペニスを服の上から優しく撫でる。


「…ぁ、…ァ、っ」


そうすれば吐息が混じった喘ぎ声を出して反応してくれる。本当に可愛過ぎだ。


「………」


順平は起きない。
順平の妹も来ない。

これは千載一遇のチャンスではなかろうか。


俺はもう我慢する事が出来ず、少し強めに手を動かす。段々と服に染みが出来ていくのを見ながら強弱をつけて服の上から順平のペニスを扱く。


「ひ、っ、…ァ」


そうすれば順平は身体を震わせて、精を吐き出した。
服の上から触っていただけなので、少量しか俺の手には付着しなかった。やはり直に触れるべきだったかと少しだけ後悔しながら、俺は自分の手の平を舐めた。



「……着替え」


このままではいけないだろう。
そんな事は俺ですら分かる。これは俺の責任なのだから、きちんと綺麗にしてあげよう。そう思いながら俺は濡れたタオルと着替えを取りに行くことにした。


道中で順平の妹に会ってしまい、「手出してないよね?」とジロリと睨まれつつも、茶を濁しながらその場を離れてすぐさま順平の元に戻る。



「た、武宮さん…っ、」


そうすればすでに目が覚めてしまったのか、真っ赤な顔をして布団で身体を隠そうとする順平の姿を見ておもわずムラっとしてしまった。


「あ、あの、…お、俺、汗掻いちゃったから、お風呂入ってきますっ」

「…ああ」


どうやら夢精してしまったと勘違いしている順平。俺のせいでそうなったと知らずに、俺に気付かれまいとコソコソしている。その事に悪戯心が芽生えつつも、俺は後でこっ酷く妹に怒られることを覚悟しながら、誰にも気付かれないように一人ガッツポーズを作ったのだった。



END


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