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「…い、言えません」
「………」
「ごめんなさい、で…も、俺、」
ああ、どうしよう。
武宮さん今どんな表情しているのかな?怒ってる?…それとも呆れてる?どっちにしても、俺にいい感情を抱いているとは思えない。
…怖くて、顔上げれない。
「……、」
だって俺が武宮さんの事が好きだという事が、もうバレているにしろ、バレてないにしろ、自分から「俺は武宮さんのストーカーです」なんて言えるわけないに決まっている。
くそ、…やばい、泣きそう。
油断したら零れ落ちてしまいそうな涙。瞬きさえも出来ないくらい目元に溜まった涙を零さないように気をつけながら、俺は唇を噛み締めた。
「…っ、俺、…帰ります」
やはり来るべきではなかったんだ。
上手く行けば武宮さんと付き合えるかもしれないなんて淡い期待を抱いた俺が馬鹿だった。
こんな思いをするくらいなら、いっそ武宮さんと出会わずにあのまま階段から落ちていれば良かった。
…落ちていれば、死んでいれば良かったんだ。そうすればこんな苦しい思いもしなくて済んだのに。
涙が零れ落ちる前に早く帰ろうと身体を動かせば、それより先に武宮さんに腕を掴まれてしまった。
「は、なしてっ」
「……待て」
「やっ、…離して、ください」
「離さない」
暴れるな、落ち着け。と大きな手の平で背中を摩られて、俺は戸惑いながらも抵抗する力を緩めた。
「……」
「……悪い」
「何で、…武宮さんが、謝るんですか?」
必死に搾り出した声は思っていた以上に鼻声だった。もしかすると知らずの内に既に泣いていたのかもしれないと思い、頬に手を当てると、案の定涙で濡れていた。
「苛め過ぎたから」
「…い、じめ?」
「泣かれるのは予想外だった」
「……?」
「…これでは後で怒られるな」
何だか話に付いていけない。
俺を泣かしたからといって、武宮さんは一体誰に怒られるというんだ?
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