短編集 | ナノ

 2-5





「……あ」

武宮さんの太くて逞しい首に巻きつかせていた腕をやんわりと外された。それに地味にショックを受けた。やっぱり男で、しかも容姿も普通以下の俺がこんな事をしていて気持ち悪かったのだろうか。そんな自虐的な事すら思ってしまう。


「……え?」

しかし武宮さんの次の行動に俺はときめく事になった。なんと武宮さんは俺の両腕を頭上で一纏めにすると、指を絡めるように片手で押さえ込んできたのだ。


「…っ、」

これには興奮せざるを得ない。
だ、だって!た、武宮さんがこんな事!こんな破廉恥な事するなんて。
だけどそんな興奮とは別に、この状態は少し怖いとも思ってしまう。だってこれではされるがままの状態になってしまうじゃないか。少しだけ抵抗を試みたのだが、力の差は歴然で、俺は両腕で精一杯抵抗してみるのだが、武宮さんは相も変わらず平然とした顔をして俺の腕をソファに押し付けてくる。

チラリと武宮さんの顔を見上てみれば、何処か楽しそうに口角を上げている。


「武宮さ、…ん、っむ」


そしてどんどん武宮さんの端正な顔が近付いてきたと思ったのと同時に、俺はキスされた。昨日と同じように少しかさついた武宮さんの唇が俺の唇と重なっているのだ。


「ん、…っ、」


だけどそんな唇の感触などそれ以上感じる事など出来なくなった。何故ならば、武宮さんのキスが濃厚過ぎるからだ。


「あ、…ゃ、っ、ン、ぷ」


それはもう文字通り「息が出来ない」状態だった。強引に俺の口内に舌を忍ばせてきたかと思うと、すぐに行動を開始してきた。上顎を舌先で撫で、歯列を舐め、頬の内側を舌で撫で、そして俺の舌を軽く噛んできた後、舌を絡めてきたのだ。


「ふ、っ、ンあ」

あまりに激し過ぎて、濃厚過ぎてキスというものがゲシュタルト崩壊のようになってくる。まるで唾液を交換し合う行為のようだとも思った。俺の口の中には武宮さんの唾液でいっぱいになる。


「あ、っ…ン、ぷ」

俺はそれを零さないように必死に飲み込んだ。自分の唾液は零れたっていい。だけど武宮さんのは零したくない。零したら駄目なんだ。そう思いながら必死に飲み込む。昨日は飲みきれなかったけど、今日こそはと思って舌を絡め取られながら必死に飲み込んでいった。その度にゴクッと大袈裟なほどになる喉の音が恥ずかしい。


「は、っ、…ん、ひあ」


そしてキスはもちろんのこと、武宮さんの手によって拘束された腕も堪らないほどの興奮要素だ。この「屈服されている感じ」が酷く燃える。首に腕を回したかったけれど、これはこれでいいかもしれない。


「…た、けみ、…や、ン、く」


ああ、やばい。燃える。興奮する。
もうこのまま俺を殺してくれ。好きな人の…武宮さんからの濃厚なチューで死ねるなら本望だ。キスで窒息死なんてロマンチック過ぎる。今の俺には武宮さんが「妹の彼氏」なんていう言葉は頭になどなかった。むしろ俺が武宮さんの彼女になったかのような気分に陥っていた。


「武宮さ、ん、…は、ぁァ」

「……っ、は…、」


そして俺は武宮さんの低くて荒い息遣いに更に興奮したのだった。ああ、やばい。勃起してしまった。こんなに密着しているのだから武宮さんに気付かれてしまうかもしれない。

俺はそれだけは気付かれたくなくて、身を捩る。


「……っ?!」


そして身を捩ったのと同時に太股に当たったゴリっとした硬い物体に驚き、俺は息を止めた。

え、…っ、え?

こ、これって、武宮さんの…?


「あ、…っ、は…ぁ」


もしかしなくても武宮さんも俺と同じように勃起しているのだろうか。…やばい、嬉し過ぎる。
というか、武宮さんは全然不能じゃないじゃんか。妹よ、お前の勘違いだ。そんな事を思いながら、「俺なんかのキスで勃起してくれている」という事実が嬉しくて、俺は自分から舌を絡めてみた。




prev / next


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -