その先へ、(19)
今、ユニカは一人だ。エリーアスやヘルツォーク女子爵に会わない限り、ユニカが『天槍の娘』であると知る者はいない。もしエリーアスに会えなければ、素知らぬ顔で道に迷ったと言えば何も起こらないのではないか。
大丈夫。
ディルクが残していった言葉を声に出さず唱える。
大丈夫、多分。だから、エリーに会わないと。
ユニカはドレスの裾を軽く持ち上げ、背中を押してくれる人々の存在を感じながら『橋』を渡るための最初の一段に脚をかけた。
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