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ある少女の懺悔−魔風−(7)
昔から、キルルは具合が悪くてもなかなか打ち明けてはくれなかった。赤子の頃に親を亡くしたキルルは、一人で生きていけるよう早く強くならなくてはと幼い時に悟っていたからだ。
怪我をしても病気になっても、まるで、弱みを見せたらこの世界から淘汰されると言わんばかりに歯を食いしばって立っていた。
それに気づいて身体の力を弛めてやるのはいつもアヒムだった。そして、キルルもいつもそれを待っていた。アヒムが気づいて、キルル一人で耐えなくてもよくなると、彼女はいつでも大声で泣き始めた。
「いつから、具合が悪かったの」
それが、どうして気づいてやれなかったのか。
「いつから」なんて訊かなくても、いつも顔を合わせていれば、あるいは彼女がどこでどう過ごしているのかを気にかけていれば気づけたはずだ。
しかし、アヒムはここ数日のキルルに関する記憶を遡ろうとしてもよく思い出せなかった。
街から帰ってきたという話はいつ聞いたのだろう?
礼拝に来た村人達の中にキルルを見たのはいつのことだろう?
昨日は、一昨日は? 誰かにキルルのことを尋ねただろうか?
今日だって、もしロヴェリーがキルルを誘いに行ってくれなければ……。
取りこぼしていたものの大きさに気がつき、アヒムの声はついに震えた。
それを、キルルはどう捉えたのか。彼女はいっそう苦しそうに顔を歪めると、アヒムの手から逃れるように枕に顔を埋めた。
「ごめんなさい。ごめんなさい、みんなにうつすつもりはないの。夜になったら森まで歩こうと思ってたのよ。だからあたしが病気を持ってきたってみんなに言わないで。まだあたしだけなら、あたしだけだったら大丈夫だから……」
それは聞いているこちらの胸が抉られるような悲鳴。
身体を灼く高熱が間近に迫った苦悶の最期を現実として突きつけてくる。その恐怖だけでなく、村人の不安が爆発し自分に向けられる恐怖にも耐えている。それでいてその村人達のことを案じてもいる。
今にも気が触れてしまいそうになるのを堪えた声だった。
アヒムを前にしてもなお解けないキルルの緊張の糸が目に見えるようだ。
「違うよ、キルル。私は、病を隠していたことを怒っているわけじゃないんだ。ただどんなふうに具合が悪くなったのか聞かせて欲しいだけで……。薬も用意してある。森になんて隠れなくても大丈夫」
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