天槍のユニカ



見つけるために(2)

 金色の灯火が反射し、歴代の王、そして王妃の冠が燦然と光り輝く。三人は冠と向かい合う祭壇の前に跪き、王が宣誓の詞を唱えあげる。新たなる年も、王族として国を導き、国に尽くすという誓いの言葉だ。
 ユニカはそっと顔を上げて祭壇の向こうを見遣った。クレスツェンツのティアラを見つめ、考える。
 彼女が生きていたら、いずれは一緒にこの廟へ入り、こうして王とともに宣誓をするかも知れなかった。
 彼女のことだ、ユニカが可愛いという理由だけで養女に迎えたりはしなかっただろう。
 王家の責任をユニカが理解するまで教え込み、自分の後継者として育つことを要求してきたはずだ。クレスツェンツの王妃としての顔を見たことはあまりなかったが、彼女はそういう、強引さも備えた女性だった。
(私に、王族の真似事が出来たと思いますか?)
 ユニカが自分でその問いに答えるなら、否である。クレスツェンツのようにたくさんの人を愛する勇気が、ユニカにはもう、無い。
 視界の隅で、きらりと光が揺れた。王が顔を上げたのだ。彼の金の髪をまとめている飾りが、動きに合わせて光を弾いたらしい。
 エメラルドのビーズを編んだその髪留めは、ユニカにも見覚えがあった。クレスツェンツがユニカに教わりながら編んだものだ。
 懐かしい品を身につけた王は、宣誓を終えたというのに並ぶ冠を見つめたまま動かない。
 その視線の先にあるのは、彼の妃の――最初の妃と、クレスツェンツのティアラ。どんな表情をしているのかは見えなかった。ただ、彼はしばらくそうして妃たちのティアラを見つめていた。
「……陛下」
 ディルクに声をかけられてようやく、王は腰を上げる。短い儀式はこれで終わりだ。次は礼拝堂へ行き、天の主神の言葉を代弁する導主たちから、新年の言祝ぎと戒めを受け取る儀式が待っている。
 当然、ユニカも列席することになっていた。またこの重たい衣装を引きずって歩かねばならない。
 そしていよいよ、ディルクに指輪を返さねばと思った。いつ声をかけようかと迷った矢先、廟を出て行くはずの彼は途中で屈み込み、石床の上から何かを拾い上げていた。
「何か、落とし物を?」
「ああ、以前入ったときに落としたものを見つけただけだよ」
 ディルクの手元で滴の形をした緑色の石が光る。彼はすぐにそれをしまい込んだので何かは分からない。
 しかし「以前」という言葉に、ユニカは気まずくなった。近衛隊に部屋を荒らされここへ逃げ込んだユニカを、ディルクが迎えに来てくれた、あのときのことだ。
 全身で彼を拒んだユニカを、それでもディルクは抱きしめ、外へ連れ出してくれた。ユニカの周りで弾ける稲妻を恐れもせずに。

- 450 -


[しおりをはさむ]