天槍のユニカ



盤上の踊り(16)

「フーベルト・チーゼル!!」
 大音声は剣戟を切り裂き、興奮で顔を真っ赤にしながら兵士たちの戦闘を見ていた外務卿の耳にも届いた。はっと顔を上げた彼は、ディルクが掲げ持っている矢に気づいて一瞬だけ怪訝そうな顔をする。
「卿の号令で放たれた矢だ。これに私の血がついている意味が分かるか」
 血の上っていた彼の頬が、みるみるうちに白く褪めていく。よろけたのか、外務卿は一歩後退った。
「……逆徒を捕らえよ。抵抗する者は殺せ」
 冷徹に命じるディルクの上着、矢を抜いたところには、じわじわと赤い染みが広がっていく。
 エリーアスが駆け寄ってきて抱きしめてくれたのにも気づかず、ユニカは歯を震わせながら、王太子の後ろ姿から目を離せないでいた。





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