審問・青金冠(4)
そして、騒がしくなるかと思われた議場は水を打ったように静まりかえった。反発するであろう彼らを宥める形で説明しようと考えていたディルクは当てが外れ、一緒に黙ってしまう。しかし、
「おお、三つ名≠ニは畏れ多い! それは王家と大公家、そして四代までの王家の子孫にのみ許される御名」
その沈黙を破ったのは台詞を読むようにわざとらしく驚く声だった。声の主は全員の注目を集めると、ちらりとディルクを見上げて肩をすくめた。
「エルツェ公爵のおっしゃるとおり! 三つ名とは、しかも『ニグブル』は……王家のご家名ではございませんか!」
再びチーゼル外務卿が声を張り上げるのを合図に、ようやく貴族達は我に返った。
「『天槍の娘』に王家のご家名を!?」
「ばかな、あの娘は辺境の農村で生まれた娘です! 間違っても王家との血縁などあろうはずがございません!」
「血縁を問題にはしていない」
まだいくつか上がっていた抗議の声を押さえつけるように、初めて王が口を開いた。
「陛下、それでは如何なる事由にて『天槍の娘』に王家の名を? まさかあの娘に宿る異能のため――」
「控えよ、外務卿」
ユニカを城に置いているのは、王が彼女の血の力に執心しているから。皆がそう思っているが、誰もそのことに触れようとはしない。
その触れてはいけない事情に口を挟もうとしたチーゼル外務卿は、王に睥睨され言葉を呑み込む。彼は口惜しげにしつつも頭を垂れて椅子に座り直した。
「娘に王家の家名が与えられるは、正当な手続き踏み、我が妃クレスツェンツが娘を養女に迎えていたためである」
「養女!?」
「そのような布告はございませんでしたぞ!」
「卿らも知るとおり、娘に王家との血縁がないのは明らか。ゆえに娘に王位継承権はなく、そのため布告はしておらぬ」
深く追求されても、この発表に矛盾は見つけられないだろう。作り上げた事実≠ヘいたって単純だからだ。
王妃はユニカを養女にしていた。証書はそろっている。ただ、この手続きが完遂されたのが王妃の存命中ではなくごく最近であるということを除けば、ほかに嘘はない。
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