審問・青金冠(3)
相手の負けは確定した。あとはどこまで掘り返していたぶってやるかだ。ディルクは議員達の中に視線を滑らせ、最初の獲物にする人物をじっと見つめた。
「あの娘が王族の殺害を……!?」
「大逆罪は極刑だ」
「しかし、大逆罪での処刑は民衆にも公開することになります。王族が平民の、それも異能の魔女に殺害されたというのは外聞が悪すぎる」
「秘密裏に執行する方法はいくらでもあるではないか」
「ところで、娘の身柄は……? 本日は出廷していないが」
ささめき合っていた当主達は一斉にディルクの席を見上げた。
白々しい。そう思うものの顔には出さないように、ディルクは彼らの視線を受け止めて淡々と答えた。
「彼女の身柄は私が預かっている」
ディルクが答えるまでもなく、ここにいるすべての者がその情報を得ていたはずだ。ただ、ディルクが正式に認めなければそれを追求できなかっただけで。
「殿下、恐れながら、それはどうした意図によるものでしょうか?」
「どうしてとは不思議なことを訊く。彼女が不当な暴力に曝されぬよう、保護しているだけのことです」
「あの者には王家の庇護を受ける資格などございません。それどころか、シヴィロ王家のご継子を弑し奉った大逆人でございます」
息巻いて立ち上がったのは外務大臣も兼任するチーゼル公爵だった。王城へ入る折は世話になった相手だが、その彼に冷ややかな視線を向け、ディルクはわずかに顎を反らした。
「それは、この告発が真実であればの話」
ディルクの席を見上げていた当主達はあからさまに眉を顰めた。顔色が変わらないのはエルツェ公爵とエリュゼの二人だけだ。
「この審問会、皆様はユニカへの審問のために開かれたとお思いのようですが、王家としての見解は違います。その前に議長、ユニカの名について訂正を要求します」
「はい?」
アーベライン伯爵が呆けた返答をするのと同時に、傍らの書記官がペンを構えた。両者は何を訂正することがあるのかと怪訝な顔だ。
「彼女の名は、『ユニカ・リーゼリテ・ニグブル』です。訂正を」
書記官は唖然と口を開いただけで、ペンを動かそうとしなかった。王家の二人に背を向けて座っていた議長はわざわざ振り返って書記官と同じ顔をしてみせる。
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