ディルクは押し黙った。
メヴィア公爵は、真に宮廷の安寧を望んでいる。それが王政の機能を最大限に発揮させ、王の統治を国の隅々にまで届けることに繋がると信じている。だからジゼラを、とディルクにすすめていた。
王や、臣下達が支えているこの国の安穏を揺るがすとしたら、それは誰なのだろう。
異能を持ちながら公爵家の娘になり、王族の妃にまで手が届こうとしているユニカなのか。
それとも、武力で敵をねじ伏せる世界で育ったディルクなのか。
メヴィア公爵の目には、ディルクも十二分に警戒すべき騒乱の種として映っているようだった。
「――分かりました。ご忠告に従い、もう一度減刑を検討してみましょう」
ならば、味方にしたい相手の前では牙も爪も隠しておかねばなるまい。
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