天槍のユニカ



みんなのおもわく(11)

「それもメヴィア公爵家だったわ」
 再び拍手してくれるクリスタの反対側で、今度はエリュゼもにっこりと笑った。
「おっしゃる通りです。では、系図を書いてみましょう」
「……今?」
 そんなことより、ヘルミーネを捕まえて相談したいことがあるのに。
 しかし、エリュゼが頷くより先に、ユニカのお勉強を面白がったアルフレートが書き物机から便箋とペンをとってきて、三人をテーブルに招いた。サブレの食べこぼしがぽろぽろ落ちていたのは、おのおのでそっとよける。
 四人で額を突き合わせながら、ユニカが便箋の裏にエルツェ公爵と夫人、亡き王妃クレスツェンツ、王や、リリーマルテ妃の名前を書いて、線で繋ぐ。
 さらにメヴィア公爵夫人と、三女のジゼラ姫、アルフレートとカイの名前も、エリュゼに言われるまま書き足した。それから、エルツェ公爵の曾祖母は王家の出身。メヴィア公爵家も、五代遡れば王女を妻に貰っているらしい。
 それも書き添えて出来上がった図は、二家が王家をぐるりと取り囲んでいる形になった。
「ユニカ様、きちんと覚えていらっしゃるではありませんか」
「姉上のお名前が抜けてるよ」
 クリスタが賞賛してくれる脇から、ちゃっかり話の輪に入っていたアルフレートが手を伸ばして、エルツェ家の中にユニカの名前を書き加える。
「あら、でしたら殿下のお名前も」
 クリスタもそれに続いて王の下にディルクの名前を書き、王家と二つの公爵家の家系図が完成した。
「壮観でめまいがしそうですわ」
 クリスタは胸を押さえてそんなことを言うが、ユニカは特に何も感じなかった。ただ、アルフレートとクリスタは、わざとユニカとディルクの名前が隣り合うように書いたように思える。そちらの方が気になった。二人は今日が初対面らしいが、なんと息の合ったことか。
 エルツェ家の端にいるユニカ。王のあとに続くディルク。並んで名前が書かれたところで、ここに線が結ばれることはない。
 空白を見詰めていると、エリュゼが咳払いしたのでほかの面々は同時に彼女を見た。

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