みんなのおもわく(10)
「姫君もご一緒のようでした。三女のジゼラ様ではないかと思います」
「ええ、はい。いらっしゃると聞いています」
メヴィア家の三の姫、ジゼラの名前ももちろん名簿にあったので知っている。彼女とは公爵家の姫君同士として親しくすればいいのか、いやしかし、向こうは自分とユニカを同列などと思っちゃいないだろうから、さっと挨拶するだけでいいのか……という悩みが生じたくらいなのだから、忘れるべくもない。
そうだ、彼女への対応策は先にヘルミーネに聞いておこう、と思いついたユニカのそばで、クリスタはもどかしげに身体を揺すった。
「聞いています、ではないのですよ、ユニカ様。これはとっても珍しいことなのですから」
「珍しい?」
「そうです。公爵家の方々は、お互いにあまり親しくお付き合いなさいません。よっぽどのことがない限り」
「……仲がお悪いのですか?」
ヘルミーネの茶会は平和だと思っていたが、実はここもぎすぎすした催しだったのだろうか。そう危惧したのも束の間、クリスタはしびれを切らしてユニカの手を掴んだ。
「ユニカ様! いくら今までこういうことにご興味がなかったからといって、そこまで無知でいらしてはいけません! 曲がりなりにもご実家のことなのに!」
「よくぞおっしゃってくださいました、クリスタさん」
ユニカが突然の大声に驚いていると、髪の細工を終えたエリュゼが深々と頷く。そしてクリスタと同じように椅子を引っ張ってきて、彼女と二人でユニカを挟むように座った。
「お勉強の時間です」
「今?」
「はい。まずは復習から。エルツェ公爵のお母上のご実家はどちらでしょうか」
エルツェ家の系譜の話は、エリュゼの講義が始まった最初の方で教わった。突然の問題にたじろぎながらも、ユニカは数ヶ月前の記憶から懸命に答えを探す。
「えっと……メヴィア公爵家、だったと思う……」
エリュゼは澄ました顔で頷くだけだったが、クリスタは嬉しそうに拍手をしてくれた。正解らしい。
「その通りです。ですから、ユニカ様のお継父君のテオバルト様と亡きクレスツェンツ様、当代のメヴィア公爵はおいとこ同士ということになります。では、クレスツェンツ様とご再婚なさる前の陛下のお妃、リリーマルテ様のご実家は?」
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