天槍のユニカ



再会(15)

* * *


 連れてきた仕立屋が落ち着いてくると、当然のことながらクリスタは女に説明を求めた。
 しかし、彼女は涙と鼻水で芸術的なことになった顔をハンカチで覆い「おげじょうをなおざぜでぐだざい」とまず要求した。
 ユニカとクリスタの同意で仕立屋が退出したあとの、応接間の空気といったら。
 自分がひいきにしていた商人が、王太子の寵姫に危害を加えようとしたように見えなくもない、などと考えていたのだろうか。クリスタは終始蒼白で、「知り合いだ」と言ったユニカに事情を尋ねることも思いつかなかったようだ。
 エリュゼや騎士達ももの言いたげにしていたが、ユニカは重苦しい空気の中で女が戻ってくるのを待っていた。
 たっぷり四半刻をかけ顔を元通りにして戻ってきた女の――マクダの目はまだ赤い。
 ユニカは立ち上がって彼女を迎えた。驚くエリュゼやクリスタには構わず椅子をすすめたが、昔と変わらず派手な装いの服飾商≠ヘ緩やかに首を振って腰を折り、それを辞退した。
「マクダ、きちんと説明なさい。そなた、ユニカ様のことを存じていたのですか? それで、ユニカ様にお目にかかろうとしてわたくしの依頼を口実に使ったのですか」
 クリスタが少々興奮気味に問い詰めると、マクダはしょんぼりとうなだれる。
「申し訳ございません、クリスタお嬢様。でも決して、お嬢様のご依頼をダシにしたわけじゃあございません。十日でお嬢様のお友達のドレスを仕上げる、それはお約束いたします」
「それでは説明になっていません。なぜそなたがユニカ様のことを存じているの」
 うなだれたままマクダは黙ってしまった。帽子についた羽根飾りも一緒にしょぼんと床を覗きこんでいる。昔より帽子が大人しいサイズになったのは、そういう流行だからだろうか。
 叩頭するマクダを見下ろすクリスタは信頼していた仕立屋に裏切られた気分なのだろう。さっきまでやる気に満ちていた目が悲しげに潤んでさえいた。

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