雲の向こう(13)
ユニカはそう決めたのだった。
* * *
教会堂を出たユニカが向かったのはエルツェ公爵家の屋敷だった。
ユニカの心境としては「お邪魔する」だが、一応ユニカにとっては実家にあたる場所である。急に帰ったところで何も差し支えはないはずだ、とエリュゼが言うので、ユニカは城へ戻らず、実家≠ヨ帰ることにした。
エルツェ公爵夫妻はまだ戻っていないらしく、先に帰宅して昼を済ませていたアルフレートがユニカを迎えてくれた。
「姉上、しばらくうちにいるって本当ですか? しばらくってどのくらい?」
まとわりつくように右から左から質問してくるアルフレートにはカイを呼んでくるようにお願いして、ユニカは屋敷の中へ入ってこようとしないクリスティアンら近衛騎士を振り返った。彼らは、自分達の任務がここまでであると分かっているようだった。
「どうもありがとう。おかげで無事に帰ってこられたわ」
「出来るなら、王城までお送りしたいと思っておりますが……」
そう言うクリスティアンに、ユニカは首を振って答える。
「あなた達の仕事は、私のゼートレーネ行きの警護だったはずよ。もうアマリアへ到着したし、エルツェ家の屋敷での警護は必要ないわ」
クリスティアンが苦笑する理由はなんとなく分かる。彼はディルクにとってかなり特別な友人であるようだから、ユニカが友人の望みに応えてくれれば――と思わないでもないのだろう。それを口にするという押しつけがましいことをしないのが彼のよいところだ。
一緒にエルツェ家の屋敷に留まるつもりのエリュゼは、玄関ホールの中でユニカを待っていた。そんな彼女をちらりと振り返り、この二人は上手くいくといいなと思った。
もし、自分達が上手くいかなくても。
「戻って殿下に伝えて欲しいことがあるの」
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