冷たい夢(32)
怪我人の傷を懸命に手当てし、痛みを取り除こうとするアヒムの姿を見たことがあるだけに、その知識や技術を尊敬していただけに、ユニカは自分に宿る血≠フ異端であることをすぐに理解してしまった。
その血が、どんなに人を惑わすものであるのかも。
廊下の窓から空を見上げる。東の空は明るいが、村の上には雲があるらしい。地面に触れては消えるほどの頼りない雪が降っていた。
なんて静か。
きっと、わたし一人がいなくなっても誰も気がつかない。
足音も、足跡も、雪が消してくれるはずだ。
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