甘くていとしい湖畔の一日(22)
太鼓に交じって笛やタンバリンの音も聞こえてくるようになったかと思えば、庭園の一角に楽器を手にした集団がいた。その中にはコーエンの姿もあった。
「お祭でもあるの?」
「君の歓迎会をしたいそうだよ」
ユニカは大きく瞬きながら、もう一度庭を見下ろした。
そうか、それで朝から館の中に人が多かったし、レオノーレは蕪の収穫に勤しんでいたのか。コーエンが今夜<tィドルを弾けると喜んでいたのもこのためだ。
驚きと、別のふわふわした心地……嬉しさが胸にこみ上げてきて、言葉が出てこない。
「君には内緒にしたいらしいから、夕方になるまでは知らないふりでいてあげてくれ。行こう。見つかったら残念がられる」
ディルクに耳打ちされ、ユニカは操られるように頷いて窓辺を離れた。
王妃が、この土地をユニカに譲ってくれた理由がまた一つ分かった気がした。
ここも施療院と同じ。色々な人が混沌と混じり合って陽気に生きている。
この土地はユニカを受け容れてくれると、そんな確信があったのだろう。
少し前までならユニカは気後れしてしまっていただろうが、今はただ嬉しいと思う。
施療院と、ゼートレーネと、それから、手を引いてくれるディルクと。自分の拠り処が増えていくたび、陽だまりの温かさが胸の中に広がっていくのを感じた。
このあと、賑わしい夜がユニカを待っている。
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