創作雑話@SS付き +
エルツェ公爵こと、テオバルトさんは亡くなった王妃様の4歳年上のお兄さん。
曾祖母が王家から嫁いで来た王女であるため、シヴィロ王家の典範に則ると、広義の王族に含まれます。(七公爵家の嫡流且つ王族から数えて四代目までは王家の親戚とみなされる)
そのため、ミドルネームは考えていませんが、本当の名前は「テオバルト・○○○・エルツェ」です。
まずはシスコン。
王妃様こと妹のクレスツェンツのことは大変可愛がっていました。
可愛がっていたことが本人に伝わっていたかは別ですが。
そして、おしゃべり好き。ですが、自分が喋ることで相手の本音を聞き出すのが上手いタイプなので、よく喋るようでもエルツェ公爵の本音は読みづらいです。
ただそのおしゃべりな性格が寡黙な陛下は大変お気に入りのよう。
王妃の兄、つまり自分の義理の兄弟という関係になる以前からエルツェ公爵のことを気に入って側近(またの言い方を子分)にして可愛がっていました。
年はひとまわりほど離れていますが、陛下とエルツェ公爵は義理の兄弟である前に友達です。
それは王妃様が亡くなっても変わらなかった、むしろお互い大事な人を亡くした悲しみを分かち合える関係でした。
続けて息子であり甥であるクヴェン王子を亡くした時も同様です。
次にヘルミーネさん。
エルツェ公爵の2つ年下の奥様です。
とある侯爵家の姫君。
地方貴族の家から都へ嫁いで来ました。
厳しい親の教育を受けて育ったクールで真面目な人です。
なので、慣れない都のしきたり諸々もすぐに習得し、立派に妻やってます。
亡くなった王妃様とも仲良しでした。
王妃様がエルツェ公爵に対する不満をぶちまける相手でもありました笑
二人は姉妹で友達でした。
ところでクールなヘルミーネさんは、元気と愛想のいい女の子が好きと公言して来た公爵の真逆を行く性格ですが、どことなく寡黙で勤勉な陛下に似ている…笑
だからなのか笑、クールなヘルミーネさん、よく喋るエルツェ公爵というカップルはなんだかんだうまくいっています。
実は自分の好みを把握していないのがエルツェ公爵……?( ∩ˇωˇ∩)
イチャイチャはしてませんが、公爵が5喋ったらヘルミーネさんが1返すという雰囲気でいつも自然と一緒にいるようです。
好いた惚れたではないにしろ、お互い丁度良いと思う距離感が一致した。
そういう夫婦でした。
二人の間には男の子が二人生まれています。
おそらく次で登場するかと思うのでこちらの詳細は本編で。
で、ここまで馴れ初めの話が一切ないように、二人には馴れ初めも何もありません。
ただの政略結婚なので、親が決めただけで、社交の場で何度かすれ違ってお互いの顔をぼんやり覚えてるという程度だったと思います。
いくら家柄がよくても田舎者と結婚するのは嫌だ!とテオバルトさんがごねていたため縁談がまとまるのに時間がかかり、事前にお知り合いになる時間はほとんどありませんでした。
(そのため、結婚したのは妹である王妃様の輿入れの直前)
まじまじとお互いの顔を見たのは結婚式の前日くらいなのでは?
公爵はヘルミーネさんのことを「妻」「家内」「君」あるいは「ミンナ」と呼びます。
ヘルミーネさんが公爵のことを呼ぶ時は「夫」「旦那様」です。
今後はユニカの両親となる二人。
結構重要なキャラなのにそんなに深く考えていませんでした←
ユニカのことも気にしつつ、夫妻のこともちらちらと見守っていただけると嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
残りのネタや、今後リクエストがあったりしたらまた語りたいと思います(*´ω`*)
* * * * *
日差しがあるのに雪が降っている。そんな不思議な天気の日。
甥であるクヴェン王子の死をきっかけに公職を退き、家でごろごろし、暇に飽いたりそろそろ王が寂しがっているだろうと思った頃にだけ登城するという暮らしを始めてから、ふた月以上が過ぎていた。
王城では様々な変事があったようだが、その情報を仕入れはしても、テオバルトは動かなかった。
エルツェ公爵と呼ばれる彼は、その日は暖炉の前に毛足の長い絨毯を敷かせて本当にごろごろと転がり、猫の気持ちについて考えていた。 猫を飼ったことがないので、結局いまいち想像が及ばなかったが。しかし、この怠惰を極めたくつろぎ方も悪くない……猫は本を読まないだろうがな。
そう思っていた昼下がり、 寝そべって読書にふけっていた彼の傍に妻のヘルミーネがやってきた。蒸留酒(ブランデー)を垂らした熱いお茶を銀のトレーごとテオバルトの前に置き、立ち去らずにその場に座る。
おや珍しい……と思いながらずりずりと彼女の足許へ這っていき、試しにその脚に頭を預けてみる。すると何事もなく膝枕をして貰うことに成功した。幾重にも下履きを重ねた上に頭を置いたって、太腿の感触もなにもなかったが。むしろふかふかしてちょっとしたクッションのようだ。
果たしてどういう気分だったのやら、妻はこれまた珍しいことに膝に乗せたテオバルトの頭を撫でてくれる。
こんなことをされるのは妹が死んだ時と、甥が死んだ時以来だった。
「寝てばかりだから、落ち込んでいるように見えるかい」
「いいえ」
「ほう、じゃあどうしてこうも甘やかしてくれるんだろう」
「幼い頃に飼っていた猫が、こうして暖炉の前でごろ寝をしていたのを思い出したので、つい」
なんと。猫の態度が再現できていたらしい。
そしてどうやら妻は猫好きなようだ。結婚して十数年、初めて知った。
「あのお姫さまを引き取ってくれないかと陛下に言われたよ」
かすかな驚きはすぐさま小さな情報としてテオバルトの心の中に染みこんでいき、代わりに彼が口にしたのは、猫の話題とはひとつも関係のない言葉だった。
「そうですか」
ヘルミーネは表情をかえることなくテオバルトの髪をなで続ける。
「嫌ではないかい? もっとも、お姫さまは陛下の客人としてずっと王城で暮らすらしいから、この家に来るのは年に何度かだとは思うけど」
「陛下のご命令なら、臣下は断る言葉を持ちません」
「君はユニカに会ったことがあったっけ」
「いいえ。遠目に姿を見たことはありますが」
「ふーん、そう。正直ね、性格の悪い子だよ。愛想がなくて人見知りで、自分が逃げ腰なことを隠すために私を睨んできた。仮にも君が母親ということになるわけだし、そういう子でもいいのかなと」
「王妃さまが目をかけて育てられた方です。それだけの娘でもないでしょう」
前髪を撫でられながらヘルミーネを見上げ、テオバルトは内心舌打ちした。
妻は妹の王妃に洗脳され、一緒に教会の施療院をもり立てる事業を手伝ってきた。それゆえ、王妃からユニカに込める期待についてはいやというほど聞かされていよう。
だから今も、表情は淡々としていても内心は嬉しいに違いない。現に、拒否する言葉を口にしない。
テオバルトは大変嫌だった。あんな厄介な娘を引き取るなど、百害あって一利無しだ。王の頼みを聞くかたちだとしても他家からの反発は大なり小なりあるだろうし、娘として養育したところで嫁に貰ってくれる家などあるはずがない。
この後、まさか王太子から彼女を妃に迎えたいという話が持ちかけられるとは想像もしていないテオバルトだった。
だから、妻が渋っているという理由で断りたかったのだ。ヘルミーネはエルツェ公爵夫人という肩書き以外に公の身分を持たないが、王妃を通して王とも親しく会話する仲だったし、彼女が社交界の女性たちに及ぼす影響力を利用して王家の政事を助けたこともある。だから王からも一目置かれる存在であり、そのヘルミーネが嫌だといえば、王も遠慮してくれるとテオバルトは踏んだのだ。
「君が嫌ではないなら、諦めるしかないね」
「……旦那様がお嫌でしたら、そのように陛下にお伝えになれば」
「臣下は断る言葉を持たないとか言っておきながらそれかい」
「本当にお嫌でしたら、その場でお返事なさっていたでしょうけど」
「……それはないよ」
ユニカを引き取ったって何もいいことはない。けれど相手は王だ。友人であっても主君なのだ。だからその場で断らなかっただけ。
妹の願いだという言葉が響いた――わけではない。
テオバルトはむくりと身体を起こし、 ほどよく冷めたお茶を啜った。
「まあ、いいか。娘が出来れば王妃さまがうちに残していかれたドレスやら何やらも使える。形見を棄てるのは忍びなかったしね」
「……」
ヘルミーネがかすかに笑うのが聞こえた。本当に嫌じゃないんだ。
うんざりするような、ほっとするような心地でお茶を飲み終えると、テオバルトは読みかけていた本も閉じた。
「そうともなれば、まずは息子たちに話をしなければならない。あと、明日は陛下のところへ行くかな、お返事をしに」
「お支度をしておきましょう」
「頼むよ」
ヘルミーネが立ち去るのを見送ってからテオバルトも立ち上がり、振り返った先にあるテーブルを眺めた。
そこで酒杯を手にいろいろな話をした妹はもういない。
その穴を埋められるものもどこにもない。
淋しくとも、止まった時と先へ進む時がある。
彼女を喪った者は、みんな後者を生きている――
埋めるものがなくても、遺してくれたものがあるから。
「まったく、お前は死んでまで人にわがままを叶えさせる力があるんだから、困ったものだよ」
彼女を愛した者は、そうやって生きていけるのだ。
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