※フェイ視点 今日も練習を終えて部室に戻ってくるなり各々が自由に羽を伸ばす時間がやってくる。厳しい特訓で疲れきった体を癒すようにソファーで寛いだりお菓子を食べたり。練習が終わってからミーティングまでの約30分程、監督が来るまで完全な自由時間と化しているこの部室で僕もまた例の如く いつもミーティングの時に使っている机に突っ伏して休憩をとっていた。そんな時、マネージャーの仕事が終わったのか部室に戻ってきたばかりのなまえが僕の隣に腰を落とす。 『練習お疲れ様』 言うなれば、定位置。なまえは練習が終わるといつも一番前の一番端っこの席に座って記録を書くのだ。だから僕はいつもその隣の席で休憩しているってわけ。まぁなまえはそんな事意識していないだろうけど。 「なまえもね」 僕は密かににやける顔を隠しながら返した。 それにしても、マネージャーの仕事って大変なんだなぁ。なまえを見ていてよく思う。ひとりひとりの調子とか、全部管理してくれてるんだもんね…… 僕は机に突っ伏したままぼんやりとペンを走らせるなまえを見ていた。そんな時、 「ねぇなまえ」 『天馬!どうしたの?』 なまえしか映っていなかった僕の視界に天馬が入り込んできた。今まで記録に集中していたなまえの視線も天馬に向けられる。 「数学の宿題ってどこだっけ?」 『あ!宿題忘れてた!』 「……」 そっか。確かなまえと天馬って同じクラスなんだっけ。そうだそうだ。宿題やらなきゃいけないなんて大変そうだなぁ。 「なんだぁ、なまえもやってないんだ」 『う……宿題、明日までだっけ?』 「うん、先生に当てられるかもしれないからやっとかないと」 『あ、私もだ』 「………」 …………あれ、何か、取り残された感。僕は楽しそうに話している二人に少しもやもやし始めていた。そんな感情に、曲がっていた背筋を伸ばして机から起き上がってみるけれどなまえは完全に天馬の方を向いてしまっているわけで、さらにもやもやが溜まっていく。 『どこだったっけ……って、フェイ?』 それから少しだけなまえに凭れかかってみるとすぐになまえが僕を見た。何を思っているのか、不思議そうに首を傾げている。きっと僕の今の気持ちなんて分かってないんだろう。そう思うと何だか拗ねたくなるわけで。何も分かっていないなまえと今の状況に全く気付いてない天馬がまた話を再開し始めたのを見てさらに体重をかけてみる。 「どうかしたの?」 『あっ、ううん何でもないよ!』 「そう?…で、宿題どうする?」 『え?あぁ、宿題ね』 気付いたかな?なまえの口調が段々と早口になっていく。まあそろそろ気付いてくれないと僕だって我慢出来なくなっちゃうからさ。僕は触れ合う肩の延長線、机の下でなまえの左手を握ってみた。 『誰かに教えてもらわないと…… っ!』 きゅ、と軽く握るとなまえの手がピクリと反応する。それから次は何を仕出かすのかと焦ったような素振りを見せ始める。あーあ、そんなに分かりやすい態度取ったら…… 流石に僕もそう思ったけど、どれだけ疎いのか天馬は気付いていないようで。天馬の鈍さにほっと胸を撫で下ろすなまえを横目に僕はまた何とも言えない気持ちになっていた。 『あ、葵ちゃんだ!葵ちゃんなら分かるかも…』 「そうだね、葵に聞いて来てみるよ!」 『う、うん、それがいいよ!』 どうやら天馬はまたどこかに行ってしまったらしい。僕としては早くなまえと二人きりになりたかったわけだけど、安心しきっているなまえを見たらいっそのこと天馬に見つかってしまえば良かったのに、なんて。僕達がそういう関係である事は天馬も知っているわけだから……うん、残念。 『ちょっとフェイ!』 そんな事を考えていたらなまえがずっと我慢していたかのように顔を真っ赤にして僕を睨んできた。 『急に何するのよ!』 「だってなまえが天馬と楽しそうに話してるから」 『……』 そう言えば黙り込んでしまうなまえ。普通だったら否定する、とかなんじゃないのか。なまえの反応に思わずムッとしてしまうけどそんなのも最初のうちだけ。 『……やきもち?』 「そうだよ……悪い?」 『え?ううん!全然そんなんじゃないけど……』 ないけど?催促するように視線を送れば急に僕から目を逸らして下を向いてしまったなまえになんというか、少し嬉しくなる。 「……これからは僕だけ見ててね」 僕はふうとため息をついてまたなまえの手を握ってみた。何かしてやろうかとも思ったけど、なまえの赤くなったほっぺを見てやめた。だってその顔、反則だよ。 『うん』 (あ、ちなみに次天馬と話したら皆の前でキスするからね) (えっ!?) つぐみ様と合作でリンク小説を書きました。つぐみ様は夢主視点です。ありがとうございました(ノω・`)ノシ << |