物音がした屋上の入口の方へ視線を向ける。もしかして先生か誰かだろうか。見付かったらまずいと皆で入口の隣にある小さな物陰に隠れる事にした訳だけど……


「ちょっと剣城君何やってんの!」
「早くしないと見付かっちゃいますよ」
「あ?先生なんて来ないだろ」


皆は一緒になって隠れてるというのに剣城だけはさっきと変わらず本を乗せて寝転んだままそこから動こうとしない。


「駄目だよ剣城、連帯責任なんだから協力しないと」
「だから先生なんかじゃないっての」


何であんなに言い張れるのかと皆が顔を見合わせた時、ついに屋上の入口のドアが開いてしまった。

ああもう知らない。私達の誰もが心の中でそんなため息をついたのも一瞬の事。耳を済ませて見れば先生ではない誰かの声が聞こえてきた。ぞろぞろと屋上に出てくる人達。制服を着てるって事は先生ではない、そして生徒会の腕章もつけていない彼らは私達と同じ校則違反を犯している生徒という事になる。


「なぁ星降、誰か寝てる」
「起こすなよチクられる」
「なぁ喜多、こいつパン持ってる」
「だからなんだ問題は起こすな」
「なぁ隼総…」
「うるせぇなテメェ少しは静かにしろよ」

「……不良ですか」
「不良やんね」
『………』


喜多先輩に隼総先輩、星降先輩に西野空先輩も。輝君と黄名子ちゃんはあまり認識ないかもしれないけど先輩達は立派なサッカープレイヤーだ。だけど一部の生徒から不良と恐れられているという事実も否めなくて。皆とにかく早く剣城を連れて教室に戻りたいと思ってるのだろう、どうしようどうしようと私にしがみついて来る。


「なまえ、剣城君呼んで来てよ」

『何で私?』

「だって先輩達とも仲いいだろ?」


狩屋は私の何を見てそう思ったのか。そう聞きたくもなるけど確かに私は皆の中で一番先輩達と交流があるかもしれない。星降先輩曰わく特に西野空先輩からは気にいられてるらしい。だけどやっぱりあの四人は怖いのだ。


『……やだ』

「えぇ?何でやんね!」


一言首を横に振れば大層残念そうな反応をする黄名子ちゃん。黄名子ちゃんは知らないかもしれないけど西野空先輩に絡まれるとろくな事がない。同じクラスになった時なんてしょっちゅうちょっかいを出されるのだ。だからやだ。もう一度そう言えばしょうがないねなんて言ってため息をつかれて申し訳ない気分になる。

こうなったら他に方法を探すしかないと皆が頭を悩ませ始めた時、


「おいなまえ、お前のパン食っていいのか」

『………!?』




次へ



企画TOPへ