それからなんだかんだで充実した授業を終えて教室に戻って来た私。皆も同じように移動教室から戻って来てお昼の準備を始めている。

そう言えばフェイの用事って何だろう。ふとサルの言葉が頭を過ぎる。今日は一度もフェイに会ってないし……クラスにいるのかな?そう思いフェイのクラスに行こうとしていた時、


<<なまえ>>

『───っ!』


頭の中に直接語りかけるようなサルの声がした。一体どこから見ているのだろうと周りを見回してみてもサルは見当たらない。


<<お昼持って四階の非常階段の所に来て>>


唯一聞こえていたその声もそれだけ言って途絶えてしまった。お昼持って四階の非常階段……?そんな所でお昼を食べようとでも言うのだろうか。だけどこちらからサルに話しかけれないものはしょうがない。私はお弁当を持って言われた通りの場所へ向かった。









***









「やぁ、また会ったね」


言われた通り四階の非常階段へ向かえば階段に座って頬杖をついているサルがいた。それから階段を上ってきた私を見つけるなりパッと笑顔を作ってこっちに近付いてくる。


「お昼持ってきた?」

『持ってきたけど……ここで食べるの?』

「まさか、だって僕のお昼ここじゃないし」


じゃあ何のつもりだ。そう視線で訴えてみるもサルはまったく気にしてない様子で私の前に立った。仕舞いには両手を広げて満面の笑み。


「僕に抱き付いて」

『………え?』


何を言い出すのかと思えばとんでもない一言が飛び出してきて思わず硬直してしまう。いや、だって、急にそんな事言われたら誰だって固まらずにはいられない。そんな私に気付いたのかサルは「あー」と声を漏らし言葉を付け加えた。


「大丈夫、テレポートするだけだから」


何もしないよ。そう言ってまた笑顔を見せるサルだけど正直あんまり信用ならない。今まで何度悪戯された事だろう、思い出したら余計に。


『……』

「僕って信用ないなぁ……それになまえに変な事したら彼に殴られちゃうからね」

『?』


サルの言っている彼が誰の事なのかは分からなかったけど、どうやら安全だという事だけは確認出来た。


『じゃあ……』


でもこれで本当に私もテレポート出来ちゃうっていうんだからすごいよね。私はそんな事を考えながらもサルの背中に手を回した。


「ちゃんと捕まっててね」




って、あれ?どこに行くんだっけ…────






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