授業始まりのチャイムギリギリで教室に戻ってきた私。二時間目は数学。のはずだったんだけど……


『今日は自習だそうです』


私は両手に持ったプリントを教卓に置きヒロトさんからの伝言を皆に伝えた。私達の学園では全ての授業が選択式。選んだ教材の内容ごとに教室も違うという仕組みで、ここ、基礎クラスには二年生や三年生もいる。もちろん各学年でやっている内容は違うけど……


「ちゅうかなまえが先生すればいいんじゃね?」

『……え?』

「ななな何言ってるんですか浜野君悪ノリが過ぎますよ」

「速水先輩の言うとおりです、なまえじゃ一年の俺達にだって教えられっこないですよ」

『ちょっと狩屋?』

「あ、嘘です嘘です」


……思った通り、纏めてくれる人のいない今、このクラスはどんどんと喋り声が煩くなっていく。こんな時神童先輩がいたら上手く纏めてくれるんだけど残念な事に神童先輩は特別クラスだ。ああ、もう。自習なんかにしたヒロトさんを恨むしかない。そんな事を考えながらも私は仕方なく学年別に用意されたプリントを配って自分の席についた。

それからようやく静かに勉強出来ると思っていた頃、ふと後ろの席の輝君に肩を叩かれる。


「なまえちゃん、これ」

『……?』


輝君から回って来た紙を見てみれば、そこには霧野画伯作、と記された落書き。どうやら先頭の霧野先輩から回って来て皆が付け足していったらしい、紙いっぱいいっぱいに得体の知れない絵が埋め尽くされていた。


『……』


ゆっくりでもいいから少しずつ理解したいと願ってこのクラスを選んだ訳だけど、やっぱり標準クラスに移ろうかな?………っていうかこれ、提出用のプリントですよ霧野先輩。




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