校内放送で呼び出しがかかったから急いで来てみれば…


『どういう事ですか先生』


私の両手いっぱいに持たされたプリント。目の前にはまるで今起きたばかりだというような顔のヒロト先生が机に突っ伏している。


「ごめんなまえちゃん、昨日全然寝れてなくて…」

『……』

「やだなぁそんな目しないで」


そんな事言われたって今のこの状況はどう考えても自習にするから皆に伝えてくれ、というやつだ。ヒロト先生は大きな吉良財閥の社長もしているらしく生活が色々と大変そうだけど……だからといって教師としての仕事を疎かにしていいってわけじゃ…


「おいだらしねぇなヒロト」

「まったくだね、私を見習って生徒の気を引く授業をすればいいのに」

『あ…』


すると近くにいた晴矢先生と風介先生が面白いものでも見つけたかのようにヒロト先生に寄ってきた。


「何言ってるの、君達だってほとんどの授業がサッカーじゃないか」

「いいや、俺は息抜きでたまにやってるだけだ」

「同じく」


ああ、始まった。先生同士の会話というやつ。いや、晴矢先生と風介先生の場合は先生同士とだけで片付けられる関係じゃないかもしれない。まぁ一言でいうと仲がいいなぁ、って、そんな感じ。

……これは、大人しく教室に戻るべきかどうか。始まったばかりの口論にひとり顔をしかめていればふいに晴矢先生が私の肩に手を置いて言う。


「おいなまえ、なんだったら俺が変わりに授業やってやろうか」

『えっ?』


続いて混乱する私をさらにからかうように風介先生が楽しげに付け足す。


「私だったら晴矢よりは分かりやすい授業を保証するが……どうする?」

『へっ?あ…あの…』


いや、そんな事許されるはずもないけど……今の二人を見ていたら本当に授業に乗り込んで来そうな気もする。私は二人に囲まれプリントを落としそうになりながらも逃げるように職員室を出た。



教室へ





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