「──…だな、…」
「…ああ、…──」


朦朧とする意識の中で誰かの話し声が聞こえる。その声に体を起こしてみれば仕切られたカーテンの向こうで聞いた事のある声がふたつ、何やら楽しそうに話している。


『誰…?』


よく見てみれば自分が寝ていたのはベッドの上。把握出来ない今の状況に不審感を抱きながらもカーテンを開けてみるとそこには似たような髪型の二人がいた。


「あ、なまえちゃん」

「起きたか」

『優一さん、それに剣城も!』


吃驚して思わず二人の名前を呼べば先生用の椅子に座った優一さんが「どっちも剣城だよ」なんて笑ってみせる。そんな優一さんの優しい笑顔に釣られて笑顔になる私だけど、その隣で何となく複雑そうな表情をしている剣城に目線を移せば知らないうちに何か悪い事でもしてしまったのかという気分になる。


『つ…剣城…?』

「ほら京介、なまえちゃんに謝らないと」

「あ、ああ、分かってるよ兄さん」


ベッドから二人が座っている机まで距離はあるものの、優一さんの茶化すような声にその距離を詰めて近付いてくる剣城。優一さんが少し楽しそうにしているのも気になるけどそれよりもさっきから剣城の複雑且つ不機嫌そうな表情の方が気になるわけで。


「おいなまえ」

『何…?い、いひゃい!』


ついに私の目の前へと迫ってきた剣城に何をするつもりなのかと息を呑めば予想外な事に頬を抓られた。横に引っ張ったり上下に引っ張ったり、容赦なく私の頬を抓る剣城に悲痛の声を漏らせば漸く手を離した後で何かを言いかけてため息をつく。

い…一体何だと言うのだ。私は訳が分からないまま優一さんの顔を見た。弟さんのこの行動の意味を教えてくれと、そんな思いを込めたつもりだったのに、優一さんはただ私を見て微笑むだけ。

その時だった、校内放送が流れ出した。


゛生徒の呼び出しです、みょうじさんみょうじさん、至急………まで来てください゛





『職員室…?』

『放送室…?』





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