どうしてこうなったのかは知らないがどうやら彼は今とても甘えたい気分のようで。


『い……和泉?』

「なんだよ」

『そろそろどいてくれない?』


私の膝に頭を乗せて寝転んでいる和泉に恐る恐るそう言えばちらりと目だけをこちらに向けて微笑んだ。


「嫌だ」

『………』


はぁ。さっきからずっとこんな調子で膝枕をしている私の足は痺れで悲鳴を上げてるというのに。思わず溜め息。

それだけではない。パタパタと揺れる何か、私が喋る度にピクリと動く、何か。いや、これは"何か"で済ませられるほど小さくてどうでもいいようなものではない。一度見てしまえば一目でそれが何なのか理解出来てしまうほど正体が明瞭なのだ。


『いつになったら取れるんだろうね…これ』


そう言ってサラサラな銀髪に混じってぴょこぴょこと可愛らしい動きをするそれに触れるとくすぐったいのか気持ちいいのかどっちとも取れるような表情で喉を鳴らす。猫のように。もう一度言っておく。猫のように。いや、本当に猫みたいなんだと誰かと感情共有したいのに周りには誰もいない。サッカー部の皆は今の和泉を怖がって近付こうとしないのだ。私の前ではこんな風に甘えてきたりして可愛い態度を取っている和泉だけど、どうやら他の皆には威嚇するような態度しか取らないらしい。それこそ「近づくな」だの「触るな」だの、敵意剥き出しな事を言って練習にも参加出来ない状態で、グラウンドの隅でこうして私と和泉の二人だけが見学をしているというわけ。


『早く元に戻らないと練習も出来ないよ?』

「分かってるけど……なぁ、頭撫でて」


……何なんだ一体。和泉に猫耳と尻尾が生えたとそれだけ監督から言われて来てみればもう私から離れようとしないし言う事は聞かないし。かと言って全くもって猫のように自由奔放な行動をしている訳ではない。ちゃんと抑えようとしている場面もちらほらあったのだ。つまりこんな姿になってしまってこれからどうすればいいのかと困惑する和泉の感情と、猫のものか和泉のものか、するりと脳の司令塔を抜けて行動に移そうとする本能との混ざり合いせめぎ合いの結果、理性よりも本能の方が勝ってしまったと。そんな感じだ。

とりあえず、私は和泉が誰に何をされたのかを探らなければならないという課題を自分自身に課せて和泉に言われるがまま頭を撫でてみた。猫耳に触れるとくすぐったいだろうからなるべく避けるようにして頭を撫でれば和泉はまた気持ちよさそうに目を細めた。今の気持ちを表すようにふらふらと尻尾が揺れて耳が動く。


『……可愛い』


思わず呟いた時だった。その一言に反応するように大きく耳が傾き、今まで気持ち良さそうだった顔も一気に不機嫌な感情を交えた表情に変わった。


「可愛い?」

『い、和泉…?』

「誰が可愛いって?」


私の膝から頭を上げて唇がくっつきそうな程に顔を近付けてくる和泉に思わず後ずさりをすれば目の前でにやりと微笑む。


『…って、わっ!?な、なに!?』


ぐんと体が浮遊したような感覚に捕らわれたのもほんの一瞬。私は和泉にお姫様抱っこをされてしまった。軽々しく私を持ち上げて唖然とする皆の横を抜けていく。勿論私も突然の事に唖然とするしかなくて、その時には足の痺れも何も感じなかった。









***









『───ちょっ、ちょっと和泉!』

「なんだよ」

『どいて』

「嫌だ」


その後私はどこに連れて行かれたのだろう。驚きすぎて全然覚えてないのだ。ただ、こんなような会話はさっきもしたかなぁって。


『っ!?ど、どこ触って…』


色々理解する前に太もも辺りを掠める何かの感触。


「俺じゃない、まぁ、俺も触るけど」

『え?って、やだ…待って!』


太ももにあったそれは尻尾だったとして、今度は確実に和泉の手がジャージの下に入ってくる。私は急いでそれを阻止して当たりを見渡す。此処は何処なのか。和泉が何をしようとしているのか。まぁ後者の方は和泉の表情を見ればひとつしかないと理解しざるおえないんだけど。


『和泉、ここ…どこ?』

「さぁな」

『さぁなって…あっ!や、ちょ…っ』


和泉の指がジャージの中で私の蕾を弾く。それからくりくりと捏ねくるように刺激されて体が跳ねた。そんな反応に気をよくしてか遠慮なく私の唇に食らいついてくる和泉。舌で口を押し広げるようにして咥内を貪る。その勢いと舌使いで意識がだんだんと朦朧としてくる。気のせいだろうか、和泉の舌がいつもよりザラザラしていて変な気分。


『う……んぅ、…はっ』

「は……可愛い」


ぞくり。耳元で囁かれて全身が粟立つ。さっきまでの和泉じゃない、いつもの和泉。可愛い。その言葉を何度も何度も浴びせられて恥ずかしさと申し訳なさが湧き上がってくる。もしかしたら、さっきの私の言葉が嫌だったのかもしれない。だとしたら謝りたい、けど、そんな事を考える余裕は和泉の指が下着の下へ侵入してきた事によって泡ぶくの如く消えていく事になる。


「濡れてるな」

『ふ、……あぁっ!?』


侵入してきた指はそのまま目的の場所へと押し込まれていく。それから満遍なく肉壁を擦って私の弱い処を探っている二本の指に嬌声を上げればその声をキャッチするかのようにピクリと和泉の猫耳が動いた。そんな和泉が私のズボンを脱がせながら愉悦の笑みを浮かべてまた一言。


「可愛い」

『──っい!?』


その一言を合図に私を貫くようにしてナカに和泉のモノが挿入ってくる。まだ出来上がっていない私の其処にギチギチと音を立てながらねじ込まれていくソレの熱さに顔を歪めれば和泉は愛しそうに私を見つめてからおでこにキスをした。


『ひぁっ!あっ、急に…だめっ』

「名前……」

『ん、っ……いず、みっ、』


結合部から生じる水音、肌と肌がぶつかり合う乾いた音、荒くなった息遣い。全部が耳を刺激して頭が飛びそうになる寸前、今度は微かに残る柔らかな感触が唇に。


『ん…────っ』

「……っ、──!」


唇を重ね合わせながら私たちは果てた。それから乱れた呼吸を整えるように肩で息をする私の頬にごろごろと和泉が喉を鳴らすように自分の頬を擦り寄せてくる。猫の本能にも似たその行動がなんだか嬉しくて和泉の首に腕を回せば和泉も嬉しそうに私の首元に顔を埋めて微笑んだ。


「すきだ」


……ああ、やっぱり可愛いなんて言ったら、今度は何をされるんだろうか。











案外それも悪くないかもしれない
(だって大好きな貴方の)
(本能だもんね?)






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お待たせしました===(´Д`)ドゥゲザン!!和泉君に猫耳&尻尾って私得過ぎました!でも上手く設定を生かせているかどうか……
では、リクエストありがとうございました(^^)




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