彼が愛だの恋だのに現を抜かすような人間ではないという事は初めて会った時から大体にして分かっていた。そして僕もまた、彼と同じような思考の人間だった。

────彼に出会うまでは。


「白竜ー!」

「……何の用だ」

「やだなぁ、そんな顔しないでよ」


練習が終わり部室に向かっている白竜を後ろから呼び止めればあからさまに面倒くさそうな顔をこちらに向けた。まぁ白竜がそんな顔するのも分かる。だって僕最近しつこい位に白竜につきまとってるもんね。それは自分でも分かってるつもりだ。でも、だからってどうこうするつもりはない。


「そもそも君が悪いんだからね」

「は?」


白竜には伝わらないであろう独り言をぼそりと呟けば彼は頭に疑問符を浮かべて僕を見た。

多分白竜にはその言葉の意味なんて絶対に分からない。だって彼自身は僕が彼に好意を寄せている事さえ知らないんだから。


「ねぇ、白竜はさ」

「何だ」

「僕といて楽しい?」


そう言えば更にきょとんと目を瞠る白竜に思わず笑ってしまった。クスクスと口に手を当てて笑う僕に少しムスッとした表情で睨んでくる彼だけど、その口から出てくるのは彼のイデアに実に忠実な答えだった。


「……お前と一緒にいると学ばせて貰わなければならない事も見えてくる」

「えっと…つまり?」

「つまり、楽しいとは違うが一緒にいて損はないと思っている」

「……そう」


損得を聞いてるんじゃないんだけどなぁ。僕はその答えに思わず落胆した。でもまぁ白竜はそんな人だから納得と言えば納得の返答だったりもするんだけど。

あーあ。僕がもし白竜と出会ってなければこんな事で悩む事もないんだろうけど、さっきも言った通り全部白竜が悪いんだ。白竜が僕を夢中にさせるから。


「僕は白竜といて楽しいよ」

「そ、そうか」


ほら、その照れたみたいな笑顔とか、無意識のうちだったとしても勘違いしてしまいそうになる。うん、多分白竜は何も考えていないんだろうけど。


「皆が待ってる、戻るぞ」


……言うなら今がチャンスだろうか。ずっと隠していた想い。そうだなぁ、飾った言葉ならいくつもあるけど彼にこの気持ちを伝えるなら回りくどい言い方じゃ駄目だ。寧ろストレートな言葉で彼を振り向かせられたら。


「白竜」


名前を呼ばれて僕の方へ向き直す白竜にとびきりの笑顔を。











「好きだよ」












この言葉を提出します
(受け取ってくれますか)
(僕の気持ち)




-----------------------
『シュガーポット』の柚希様に相互記念として捧げます。相互ありがとうございました!これからも是非、よろしくお願いします(//^^)


<<