くらい。さむい。だれもいなくて、さみしい。

膝を抱えて、カタカタふるえる体をさすった。
右も左も前も後ろも上も下も、くらい。真っ暗で真っ暗で、どこまでもずっと真っ暗な気がした。
どこ、ここ。
気がついたらもうここにいたのだ。孤独と恐怖でいっぱいの頭は、自然と幸せな記憶をひっぱりだす。

あかるくて、あたたかくて……おかあさんと、おとうさんがいるとこに、だれか……つれてって。

そのとき、突然ぶわああっとまわりが明るくなった。




「い、」

自分のうめき声がぼんやり聞こえた。遅れてほっぺたに鋭い痛み。

「いっ…いた!痛い痛い!」

右頬が痛い。ガバッと跳ね起きて、ほっぺたをさする。

「起っきろー」

声がして、左にはジョニー、右にはタップがいた。で、なんか見た感じわたしの頬をつねったのはタップだ。間違いない。
いやそんなことより仕事中に居眠りなんて、なにやってんだわたしってば。
枕がわりにしていた両腕がしびれている。結構な時間を居眠りに費やしてしまったらしい。

「ごめん、ちゃんと起きたっ」

座ったまま左右の二人に謝るわたしに、ジョニーは婦長のとこ行ってきたらって勧めてくれたけど、あんな注射打たれるくらいならこのまま頑張ってやる!と思ってやんわり断る。そんなわたしに二人とも納得いかない、みたいな顔をした。

「でもさ、ハルおまえ…すげえ顔色悪いぞ」

タップの言葉にさっきまでの夢がまた頭の中を駆け巡る。指の先から氷水にでも浸されたみたいな、イヤな感覚がじわじわと体を侵食していく。

「ハル?」

心配そうな二人の顔が見えて、頭をぶんぶん左右に振った。顔色が悪いというのがさっきの嫌な夢のせいなら、居眠りしたわたしが悪いんだし、別に体調がどうのって話じゃないから大丈夫だ。自分に言い聞かせる。

「そんなの二人もじゃんかー」

笑って言いながら、顔がひきつってないか気になったけど、それもそうかーと笑い飛ばしてくれた二人を見てほっとした。わたしを、仲間だって言ってくれるあったかい人たちに、心配なんかかけられない。心のなかでみんなをちゃんと信じきれてないわたしなんかの心配なんか。

「あ、じゃあハル、こないだの地質調査で出てきた鉱石の分析頼んでいいか?」
「うん了解ー」

えーっと、地質調査の資料は……ああああ、あれ資料室にこないだしまっちゃったっけ。思い出したわたしは、しかたなく重い腰をあげて資料室に向かった。





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