ずっと不思議だったことがある。

「なんでスカート?」
「……へ?なにが?」

思わずこぼれた独り言に疑問で返してきたのはジョニーだった。
お互いペンを走らせながらの会話。眠くてボンヤリする脳は仕事でいっぱいだから、こういうときする会話はぐだぐだしてしまう。けどまあ、眠気覚ましにはちょうどいい。

「いや……スカートだよスカート。これ動きにくいし」
「ふうん?」
「男もさあ、一回スカートはいてみたらいいのに」
「うーん……ええー?」

階段のぼるのも、資料運ぶのも大変なわけである。
その苦労をしらない上層部のオジサマ方もスカート、はいてみたらいいのにさあ。そしたらなんか代わりの案で……も……!

「ジョニー!わたし、ひらめいた!」
「ふへ……?」

げっそりしたジョニーが資料の山から顔を覗かせた。まあ、わたしの顔もげっそりしている自信はあるけどオーラだけはキラキラしている、はず。

「あのね!ジョニー、わたしにさ、ジャージつくって!」






「ダメだ」
「うっ……ええええ!?なんでですか!」

いつものように書類を出しに行ったら、あたしの……スカートの中にジャージをはいた恰好を一目みて班長はそう言い放った。

「に……似合ってないですか!」
「そういう問題じゃねーよ!」

ポカン、と右手で軽く殴られた。うわあ職場内暴力!とか叫んだらため息をつかれた。なぜ呆れられているんだ、わたしは。ジョニーに頼んでちゃんと黒のジャージのデザインにしてもらったし……。っていうかこれ、実際に作ったのあたしだぞ…!どれだけの労力をかけたか!
そんなあたしの心中などいざ知らず、班長はめずらしく上司らしく大人の事情ってやつを掲げた。

「ただでさえ最近はいろいろ身なりについてうるさいんだぞ?」
「……班長だってたまにTシャツじゃないですかー」

大人の事情に矛盾を突き付ける。今度は、ヘリクツ言うな!と資料で叩かれた。
その資料を受け取って、あ、と思いついた。

「ジャージだけなら大丈夫ですか!」
「……ばか……そういう問題じゃねーの」

ぶへーせっかくジョニーがデザインくれたのにー、とぼやいてわざとらしく不機嫌な表情をうかべて立ち去ろうとしたら、ちょっと待った!という声が追いかけてきた。

「なんですか?」

振り返れば、やつれた顔で悪戯っぽく笑う班長。

「仮眠のときくらいなら……許す」
「お…おおお!さっすが班長ハナシがわっかるー」

言いながら早足で自分のデスクに向かう。じゃあしばらくこのままでいますね!と言い逃げしたら、ばかたれー!という仕事の鬼の声に追われた。



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